納得できるスーパーラジオを作ったことがありますか?
簡単さを優先する回路や、とにかく高感度にしてやろう的な回路では、ピーキーでノイジーなラジオになるのがオチです。
スーパーラジオのキットでさえもそんな回路が多いのが実情ですから、初心者さんが作ってピ~ピ~鳴って「こんなもんか」となってしまうことがあるとすれば残念なことです。
しかし、本来のスーパーラジオはそんなもんじゃありません。ちゃんと作れば、静寂の中から音声だけが浮かび上がる、スタジオの空気が聴こえる、そんなラジオになるんです。
この記事では、1石から8石そして豪華12石(実質9石)まで、全20種類のスーパーラジオの自作回路や製作ポイントなどをご紹介します。
1石~8石までは、ブレッドボードをベースにしたラジオ実験セットで組みました。
見た感じはバラック型のラジオです。
≫ラジオ実験セット
最高峰の豪華12石(実質9石)ラジオ。
感度は一般的なDSPラジオ以上!さらに、市販のDSPラジオより音質が良くて低ノイズ!
アナログ性能は自作のスーパーラジオでも太刀打ちできるようです。
≫9石スーパーラジオ
回路構成 | 感度 | 音質 | 音量 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1石(周波数変換のみ) | 最小構成 | |||
2石(低周波増幅) | スピーカ | |||
2石(中間波増幅) | ||||
2石(高周波増幅) | ||||
2石(他励式混合) | ||||
3石(低周波2段増幅) | ||||
3石(中1低1増幅) | ||||
3石(レフレックス) | イマイチ | |||
4石(高1低2増幅) | 高音質 | |||
4石(中1低2増幅) | ||||
4石(中2低1増幅) | 基本の形 | |||
4石(高1中1低1増幅) | ||||
5石(中2低2増幅) | コスパ良 | |||
5石(中1低3増幅TL) | ||||
6石(中2低3増幅) | 定番 | |||
6石(中2低3増幅TL) | オススメ | |||
6石(高1中1低3増幅TL) | 高音質 | |||
7石(中2低4増幅TL) | ||||
8石(中2低4増幅TL) | 他励式 | |||
9石(高1中2低4増幅TL) | 全12石 |
1石スーパーラジオ
ヘテロダイン方式のラジオとして周波数変換部しかない最小構成のスーパーラジオです。
感度:★☆☆☆☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★☆☆☆☆
この回路のポイントは、唯一のIFTに黒コイルを使っているところです。黄や白では出力電圧が低いためほとんど聴こえません。
その副作用として異常発振しやすい傾向がありますので、ベースに入力抵抗R1(100Ω)を挿入して発振防止としています。
周波数変換部は増幅作用もあるので、高1ストレートラジオラジオに近いですが、同調回路を二つ持つことになるため選択度はそれより高くなっています。
さらに、ストレートラジオでは受信周波数による感度差が出やすいですが、この1石スーパーは(ちゃんと調整しさえすれば)低い局から高い局までしっかり受信します。
さすがにスピーカーを実用的に鳴らすことはできませんが、クリスタルイヤホンでほどよく聴こえます。また、IFTが一つしかないため通過帯域が広く、スーパーラジオにしてはクリアな音質が楽しめるというのも特徴ですね。
当方の比較的良い環境では、昼間は地元5局が明瞭に聴こえます。夜になると20局以上が受信できますが混信はほとんどありません。
ただ、こちらでこのくらいなので、電波の弱い地方では少々物足りないかも知れません。
次は、局部発振の波形としてQ1のエミッタを観測した結果です。
バリコンを左一杯に回して受信周波数を最低にした時の局発波形です。
若干崩れているようです。
バリコン中央くらい、約1000KHz受信時の局発波形です。結構キレイな形してます。
バリコンを右一杯に回して受信周波数を最高にした時の局発波形です。
最低の時より信号レベルが0.3Vほど高くなっています。
この回路の入力(バーアンテナ二次側)に 20mVpp(1000KHz) の正弦波を入力して局発を同調すると、黒コイル二次側に約 1.6Vpp(⊿y)の中間波出力が得られます。
つまり、周波数変換回路でありながら黒コイルのおかげで80倍ものゲインがあるんです。
いろんな成分が含まれているのでいびつな形に見えますが、トランジスタ1石の周波数変換出力はこれが普通です。
バーアンテナの二次側は強力に受信すると10mVpp程度ありますので、最大では約0.8Vpp程度の中間波が検波回路に入力されることになります。
それから、検波ダイオードにはショットキーバリアの BAT43 を使っています。もちろん 1N60 でも使えますが、音質と音量が少し下がります。
2石スーパーラジオ
複数のトランジスタになると様々な回路構成が考えられます。「2石スーパーラジオの回路はコレだ!」みたいに決まっているわけではありません。
ここでご紹介する2石の回路は、スーパーラジオの基本回路として、より上位のスーパーラジオに組み込まれる回路になります。
低周波増幅タイプ
1石スーパーラジオに低周波増幅回路を追加した回路で、スピーカーを鳴らすことができます。スピーカーを実用的に鳴らすためには低周波増幅は欠かせません。
感度:★☆☆☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★★☆☆☆
検波後の音声信号を増幅してやろうという単純な発想で分かりやすい回路です。
回路は基本的な増幅回路。ボリュームはありません。2石構成ということで出力をやや控えめにして消費電流を抑えています。
前段の周波数変換部からは数百mVppレベルの高周波成分が洩れてくるので、Q2のB-C間にC5(200pF)を挿入して対策しています。これがないと発振気味になります。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C4)から1KHz(50mVpp)の正弦波を加えた時の出力波形です。
Q2コレクタ:約5.9Vpp
ST-32出力:350mVpp
この時の出力は約350mVpp。
低周波増幅のゲインは約7倍となっています。
この回路では出力電圧400mVppを超えたあたりから歪が多くなってきます。もっと出力が欲しい場合は電源電圧を上げると良いのですが、その場合、Q1のIcが増えないようにすることと、逆にQ2のIcを増やすように各バイアス抵抗を調整する必要があります。
感度はまずまずで、当方の環境では夜になると地元局は少々うるさいくらいに鳴ります。ただ、遠方の弱い局はあまり鳴りません。
音質はとてもクリアな音質です。
ヘッドホンで聴くと弱い局も聴こえてきますが、逆に強い局は爆音に近い音量になりますので、セットの向きを変えて音量調整します。
ボリュームが欲しい場合は、R5(10K)をボリュームに変更するだけでOKです。Aカーブ推奨。
この低周波増幅をさらに強化したのが「3石スーパーラジオ(低周波2段増幅タイプ)」になります。
中間波増幅タイプ
1石スーパーラジオに中間波増幅段を追加した回路で、2石の中では最も感度が高いです。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★☆☆☆☆
中間波増幅段は、検波回路で信号が劣化する前に電波信号を増幅するので、特に弱小電波をよりハッキリと聴くことができるようになります。これがスーパーラジオは感度が高いとされる理由の一つです。
この回路では異常発振しないので入力抵抗(R1)は必ずしも必要ではありませんが、気付きにくいレベルの発振防止やノイズ低減などの効果があるので入れてあります。
やはり中間波増幅があると感度がグッと上がります。特に夜になると海外含め何十局もの放送が受かって賑わいます。
ただ、クリスタルイヤホンは小さな音も聴こえるので、感度が高くなったぶんノイズが耳に付きやすい感じもします。
地元局はセットの向きを変えて音量を小さくしないと、ちょっとばかしうるさいです。
というか、感度が高すぎて局によっては「ビリビリ」とか「ギャギャ」とか飽和している音(異常発振ではない)がするので、中間波増幅段(Q2)のエミッタのパスコンにR8(47Ω)を入れてゲインを下げています。ここに入れる抵抗値は小さくても影響が大きく、歪の低減にも大きな効果を発揮するので音も良くなります。
「同じ回路で作ってみたがそこまで感度が良くない」というのであれば、トラッキング調整ができていない、バリコンやバーアンテナに問題がある、どこか間違っているといった可能性があると思います。
次は、バーアンテナ二次側位置に5mVpp(1000KHz)の正弦波を入力して、OSCを同調した時の中間波出力波形です。
黄コイル二次側:約100mVpp
黒コイル二次側:約5.5Vpp
黒コイルの二次側の上部が少し歪んでいますが、検波用コンデンサ C6(0.01uF) の充電による電圧降下の表れです。
周波数変換部は20倍、中間波増幅段が約55倍、全体で約1100倍のゲインがありますね。
1石スーパーでは、周波数変換部のゲインは黒コイルにより約80倍でしたが、本来の黄コイルを使ったことで1/4になりました。
なお、先程のパスコンR8(47Ω)を取り除くと、約2000倍近くになります。
2000倍もあると5mVppの入力では完全に飽和したり発振したりします。これはその時の波形。CH2のトリガーが安定しないので黄線までブレて見えます。
この回路に対して低周波増幅を追加したのが下記のラジオです。
・1石追加:3石スーパーラジオ(中1低1増幅タイプ)
・2石追加:4石スーパーラジオ(中1低2増幅タイプ)
高周波増幅タイプ
1石スーパーラジオに高周波増幅回路を追加した回路で、周波数変換の安定度が高く音質が良いのが特徴です。また、程よい感度でノイズがとても少ないです。
感度:★★☆☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★☆☆☆☆
この回路では、周波数変換部をバーアンテナコイルから切り離し、高周波増幅段の 2.2K(R1) の出力インピーダンス(抵抗性)で安定駆動する形になるので、歪が減るだけでなく周波数変換部由来の発振も起こらないようになります。
また、周波数変換による信号劣化の前に増幅を行うので音質も向上します。
ただ、高周波増幅のゲインが高いと発振しやすいため、あまり高くはできません。全く発振せずに5倍のゲインが出せれば上出来でしょう。
やたらゲインが高くてもノイズを増幅してしまうので、この位が良いのかも知れません。
それから、高周波増幅回路で位相が反転するので、この回路ではバーアンテナの二次側の極性が他とは逆になっていることに注意してください。逆にすると即発振します。
2SK192 は昔から電子工作の世界で親しまれてきたJ-FET。所要電流がやや大きくゲインもあまり稼げないため 2SK241(現在では入手困難)ほどの人気はありませんが、今でもわりと入手しやすい貴重な高周波用FETです。
普通のトランジスタを使った回路も考えられますが、バーアンテナの出力インピーダンスの関係から、高い周波数領域での感度が落ちてしまうのでFETが方が有利です。
さらに、J-FETだとバイアス回路がいらないので少ない部品で済みます。
次は、入力(バーアンテナ二次側の位置)に 1000KHz の正弦波を加えた時の黒コイル二次側の出力波形です。
高周波増幅段を追加する前の出力。
20mVppを入力して1.6Vpp得られているので、約80倍のゲインがあります。
高周波増幅段を追加した後の出力。
10mVppに変更して2.6Vppの出力。260倍にアップしたので、高周波増幅段には約3倍のゲインがあることになります。
3倍は小さいと思われるかも知れませんが、これでも周波数変換部を安定駆動することによる効果は大きいです。局部発振信号がバーアンテナ側に漏れ出してこない点も良い。
追加したゲインは少ないのに感度がワンランクアップした感じで、しかも音が良い!音量が大きい時の音割れも減って、より明るく明瞭に聴こえます。
他励式混合タイプ
1石スーパーラジオの周波数変換部(自励式)を他励式とした回路で、周波数変換の安定度が良く音質も良いのが特徴です。
感度:★☆☆☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★☆☆☆☆
他励式にしてみたが自励式とあまり変わらないという話を時々見かけます。確かに、他励式にしたからといって何かが劇的に向上するわけではありません。しかし、当方の検証結果では、ゲインは若干低くなるものの他励式の方が異常発振しにくく、音質が良くなる事が確認できています。特に音質に関しては、より明瞭な音になります。
AMラジオの局部発振回路は、コイルからタップを出すハートレー型が一般的です。ネット上では、赤コイルを使ってトランジスタのベースに同調部分を接続し、二次側から出力を取り出す形の回路も見かけますが、赤コイルはそのような使い方を想定した巻線仕様になっていないので、発振はしやすいものの工夫しないと発振周波数全域で良好な結果は得られません。上の回路のように、コレクタ側に同調部分を置くのが基本です。
トランジスタには高周波トランジスタの 2SC1923 を使いました。2SC1815 も使えますが、2SC1923 の方が若干ゲインが高く良好でした。ただ、これは 2SC1923 の fT が高いからとかそういう単純な話ではなくて、たまたま混合回路定数にマッチしただけだと思われます。R6やR7の調整次第でトランジスタの品種に関係なく、ほぼ同じ特性にしようと思えばできると思います。
次は、局部発振回路の発振波形です。
バリコンを左一杯に回して受信周波数を最低にした時の波形です。
下部がやや歪んでいて信号レベルも低いです。これでも実際には普通に聴こえます。
バリコンを右一杯に回して受信周波数を最高にした時の波形です。
信号レベルが最も高くなり、約450mVpp (150%)も上昇しています。
信号レベルの差は、若干の感度や音質の差として表れます。しかし、聴いたところでは「局発のレベルが低くなったから感度が下がった!」なんてわかるわけじゃないので、ステルス問題とならないように注意が必要でしょう。
ちなみに、この他励式を採用している8石スーパーラジオなどでは、消費電流と引き換えに発振性能を改善しています。
次は、局部発振信号の「洩れ」を、自励式と比較してみました。
バリコンを中央に回しバーアンテナの二次側をショートさせて無信号状態にしてから、黒コイルの二次側の出力を観測してみます。なお、黄線は赤コイルの中間タップです。
OSC OUT:約1.5Vpp
IF OUT:約450mVpp
約1.5Vppの局部発振で、約450mVppの不要信号が確認できます。結構洩れてますね。
今度は他励式です。
OSC OUT:約1.36Vpp
IF OUT:約420mVpp
あれれ?他励式だともっと洩れが少ないと予想していたのですが、同じくらいのようです。
ちょっと期待外れでした。
もちろん、この洩れ信号は直接聴こえるわけではありませんが、背景のホワイトノイズの原因にもなるため、なるべく少ない方が良いのです。
最後に、混合部の中間波出力波形です。
バーアンテナ二次側に 20mVpp(1000KHz) の正弦波を入力して局発を同調した時の黒コイルの二次側波形(⊿y)は1.26Vpp。
混合部のゲインは約60倍になりますね。
※様々な成分が含まれるためカウントミスしていますが、1/xで計測すると456KHzです。
他励式の混合回路を使うと性能を向上させることはできますが、トランジスタの少ない回路では、まずはゲインを上げるための工夫をする方が先でしょう。よりトランジスタの多い上位回路で他励式を採用するのが良さそうです。
3石スーパーラジオ
2石の基本回路だけでも5種類あるということは、トランジスタ数が多くなるほど膨大な組み合わせがあることになります。
それら全てを試すのも大変ですし、そもそも意味のないこともあるので、ここから先はメジャーなものやパフォーマンスの良い構成についてのみご紹介することにします。
また、スーパーラジオと言えばやっぱりスピーカーを鳴らせないと面白くないので、低周波増幅を持たない構成は除外します。
低周波2段増幅タイプ
2石スーパーラジオ(低周波増幅タイプ)にさらに低周波増幅を追加した構成です。地元局なら十分な大音量で鳴るので、ボリュームを付けないと家族に怒られます。
感度:★☆☆☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★★★☆☆
3石構成にもかかわらず、この回路には中間波増幅段はありません。
低周波増幅は「二段直結回路」という、昔から自作ラジオでよく見かける回路で、特にDC的に安定度が高いことで知られています。
この二段直結回路では電源電圧対して十分なゲイン(170倍)があるので、2SC1815にYランクを使っています。中程度以上の放送波なら電圧不足で音割れするくらいまで増幅できるので、これ以上ゲインを上げてもあまり意味がありません。
ゲインが高いので発振防止のためと、音がクリアすぎて局によっては高域がキツく感じるので、Q2のBC間に470pF(C5)を入れて対策しています。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C4)から1KHz(4mVpp)の正弦波を加えた時の出力波形です。
波形が少し歪んでいるのは電源電圧による限界が近いためです。それにしても、170倍ものゲインがあるにもかかわらず、入力無しの時は想像以上にホワイトノイズが少ないです。NJM386がまるでダメ石に思えてきます。
出力トランス ST-32 は中間タップを使っていることに注意してください。中間タップを使うとゲインは下がりますが、最大出力を上げることができます。無駄にゲインを上げても音割れするだけなので、最大出力を上げる方を優先します。
600Ω:10Ωの ST-45 なら、中間タップを使わずともそのまま使えます。というか、ST-45 の中間タップを使うともっと出力を上げることができますが、Q2のIcを15mAくらいまで増やさないといけないし、うるさくなるだけなのでやめました。
地元局は音割れするので最大ボリュームで聴くことはないでしょう。遠方の弱小放送を聴く時にボリュームを上げますが、放送局によっては音質が悪くイマイチです。
強い局は大音量なのに弱い局は音質が悪いというのは、低周波に比べて高周波の増幅が足りない回路の特徴です。なので、高周波や中間波の増幅が必要なんですね。
中1低1増幅タイプ
中間波増幅と低周波増幅を持つスーパーラジオの超基本的とも言える構成で、感度良くスピーカーを鳴らすことができます。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★★☆☆☆
2石スーパーラジオ(中間波増幅タイプ)に低周波増幅を設けてスピーカーを鳴らせるようにした回路で、それ以外は全く同じ回路になっています。
中間波増幅段があると通過帯域が狭まりますので、それが無い回路に比べると、高音域が少し減ってAMらしい音に近づいています。
スピーカーで鳴らすので、検波コンデンサ(C5)を0.0047uFに減らしてバランスの良い音に仕上げました。
2石スーパーラジオ(中間波増幅タイプ)で示した通り、中間波増幅出力までのゲインは1100倍あって、AGCのない回路としてはちょうど良い感じです。
低周波部分は2石スーパーラジオ(低周波増幅タイプ)でも採用している基本的な増幅回路ですが、この3石構成用に出力を少し上げるなど再設計しました。
Q3のエミッタ抵抗(R12)は10Ωと小さいですが、低周波増幅の特性に大きく影響します。ゲインが大きすぎるので(中間タップでは物足りない)やや低くするのと、歪の低減に大きな効果があるので必ず入れるようにします。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C6)から1KHz(70mVpp)の正弦波を加えた時の出力波形です。
約6倍のゲインとなっています。
R12(10Ω)が入っているとこの様に綺麗ですが、入っていないと歪みが出るので要注意。
この回路をさらに進化させたのが下記のラジオです。
・低周波増幅を強化:4石スーパーラジオ(中1低2増幅タイプ)
・中間波増幅段を追加:4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)
・高周波増幅段を追加:4石スーパーラジオ(高1中1低1増幅タイプ)
レフレックスタイプ
一つのトランジスタで中間波増幅と低周波増幅を行う回路で、お得感はありますが音質がイマイチなど性能的なメリットはあまりありません。
感度:★★☆☆☆ 音質:★★☆☆☆ 音量:★★☆☆☆
フレックスは中間波増幅段で行います。検波後(D1)の出力を中間波増幅段(Q2)に戻して、455KHzの中間波と音声信号を同時に増幅しています。
ストレートラジオでの一般的なレフレックスとは違って、コレクタのDCをカットするコンデンサが不要なので、倍電圧方式ではなく普通にダイオード1本の検波回路で済みます。
一見すると効率的で良さそうにも思えますが、実際はそうでもありません。
レフレックス方式は、大きな信号レベルを扱おうとすると歪が大きくなって音質がとても悪くなります。なので感度の高いスーパーラジオに組み込むためには、ある程度ゲインを落とす必要があるんですが、それが本末転倒ということになってしまうんですね。
本回路での具体的な施策ポイントは3つあります。
まず、トランジスタ(Q2)のエミッタにパスコンを入れていません。普通はパスコンを入れて増幅率を上げるところですが、入れるとゲインが高すぎて中間波増幅も低周波増幅も飽和するので使い物にならなくなってしまいます。
また、トランジスタ(Q2)に流す電流(Ic)を多めにする必要もあります。少ないと音声信号によるIcの変化率が大きくなるので中間波の増幅で歪が出て音が悪くなりますし、低周波信号の出力電流が枯渇して音割れの原因にもなります。しかし、低周波増幅用のコレクタ負荷抵抗(R9)の電圧降下が大きくなるため、あまり上げることもできません。
それから、検波後の音声信号のレベルが高いため、R7(4.7K)でレベルを落としてから再入力しています。そうしないと大きな音声信号で飽和して音割れしてしまいます。
放電抵抗(R8)を小さくする手もありますが、そうするとトランジスタ(Q2)の電流振幅が増えるので悩みどころです。
なお、この抵抗(R7)は中間波入力経路にも含まれるため、入力を下げる作用もあります。
次は、バーアンテナ二次側位置に5mVpp(1000KHz)の正弦波を入力して、OSCを同調した時の中間波出力波形です。
黄コイル二次側:約110mVpp
黒コイル二次側:約2.6Vpp
黄コイル二次側には検波後の信号(ノイズ含む)も含まれるため崩れているように見えますが異常ではありません。
周波数変換部は約20倍、中間波増幅段も約20倍のゲインです。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(R7)から1KHz(30mVpp)の正弦波を加えてボリュームを最大にした時の出力波形です。
レフレックスによる低周波増幅(Q2)のゲインは1.8倍、最終段の低周波増幅ゲインは約6倍となっています。
レフレックス方式でない普通の回路と比べると、中間波増幅のゲインは半分以下ですし、レフレックスによる低周波増幅ゲインも1.8倍と大して増幅してないんですが、ここまで下げないと飽和して音が割れるので仕方ありません。
部品定数を追い込めばもっと向上できるかもしれませんが上限は低いです。後は、周波数変換部のゲインを下げるとか電源電圧を上げるしかないでしょう。
近局が潰れる場合は、黒コイルを少しズラしてゲインを下げる方法もあります。
レフレックス方式は歪が多く、他と比べると音質が悪いです。
一度で二度美味しいみたいな魅力はありますが増幅器としてはイマイチなんですね。
そういうわけで、元々感度の高いスーパーラジオでレフレックス方式を使うメリットはなく、低周波増幅を加えたければ、素直にトランジスタを追加する方が得策です。
4石スーパーラジオ
よく「スーパーラジオの完成形は6石スーパーラジオ」と言われますが、私はそうは思いません。混合回路と中間波増幅二段を備え低周波増幅でスピーカーを鳴らせるという、一通り揃った最低限の4石構成こそが本当の意味で完成形なんじゃないかと思います。
ここではその完成形と、その他三つの構成をご紹介します。
ここまで来ると、どれも普通に聴くぶんには十分な性能を持っており、これ以上トランジスタを増やす必要もないんじゃないかと思うほどです。
高1低2増幅タイプ
4石構成ながら、あえて中間波増幅を設けずクリアな音質を狙った回路です。適度な感度でノイズがとても少なく快適です。
感度:★★☆☆☆ 音質:★★★★★ 音量:★★★☆☆
スーパーラジオらしい部分は周波数変換部だけという、1石スーパーラジオの流れを組んだ回路になっています。
このように中間波増幅段がないということは、IFT同調回路(黄コイル、白コイル)がないので通過帯域が広くなります。その結果、音声信号の周波数特性が良くなる、つまり高音が効いてクリアに聴こえるわけです。
反面、混信には弱くなります。また、音質的にAMらしい温かみのある感じの音が好みの人には向かないかも知れません。
必要以上に高周波を増幅しないためノイズを拾わないのも特徴です。電子ノイズの多い現代の環境では、この程度の感度がちょうど良いのかもしれませんね。
その他に、高周波増幅段が周波数変換部のバッファリングの役目も果たすため、結果的に音質劣化が少なくなるという特徴もあります。
実際に使ってみると、混信に困るような事はあまりなく、放送によってはFMに近い音質で聴こえますので、クリア系が好きな方にはぜひとも試してみて欲しい回路です。
この回路の高周波増幅回路は、2石スーパーラジオ(高周波増幅タイプ)、低周波増幅回路は、3石スーパーラジオ(低周波2段増幅タイプ)と同じですので、詳しくはそちらを参照してください。
中1低2増幅タイプ
「初歩のラジオ」など昔の電子工作雑誌にも時々載っていた構成で、中間波増幅と低周波二段によりパワフルに鳴る回路です。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★★★☆☆
二段直結の低周波増幅回路は、中間波増幅段がある前提の設計にしてあります。
具体的には、心持ち高音域を上げるのと(C5)、トランジスタ(Q3とQ4)のIcを増やして歪まない出力上限を引き上げました。
また、検波出力が高いのでゲインを少し下げる代わりに、音質が向上するようにしてあります。出力段(Q4)のパスコンに抵抗33Ω(R12)を挿入して歪を大きく抑えるほか、R9を小さめにして帰還量を増やしています。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C6)から1KHz(7mVpp)の正弦波を加えた時の出力波形です。
ゲインは96倍。
歪を抑えつつ出力を上げているので、700mVppくらいまではほぼ綺麗な正弦波が出力できます。
その代わり消費電流は多くなっていますが、、まぁ大したことないといえば大したことはないですね。
1石の低周波増幅回路より良く鳴ります。地元局はボリュームを絞らないとダメですが・・・
昔の雑誌に掲載されていた同様の回路よりも、部品数は若干多いですが性能は上です。
それにしても今思えば、エミッタのパスコンに小さい値でも抵抗を入れさえすれば特性が大きく向上するのに、昔の雑誌はやたら感度を上げることが最優先で、ゲイン過剰なラジオ製作記事が多かったようにも思います。
だから子供の頃はピーキーラジオしか作れなかったのかも知れません。
中2低1増幅タイプ
スーパーラジオの全ての基本機能を一通り備えた完成形と言っても良い構成です。高感度でAGC付き、AMらしい音質のラジオです。
感度:★★★★☆ 音質:★★☆☆☆ 音量:★★☆☆☆
中間波増幅が二段になった本格的なスーパーラジオです。一段でもゲインが高めな感じですから、二段になるとAGCは必須になります。これがないと使いモノになりません。
もし中間波増幅二段の回路を作ってみたけど、AGCが無くてもローカル局が普通に聴けるとか、AGCを付けると感度不足を感じる…というのであれば、トラッキング調整ができていないなど、部品や回路に問題がある可能性があります。少なくとも本来のスーパーラジオの性能ではないと思われます。
VR1はAGC調整用です。固定抵抗(10K程度)で済ませることもできますが、好みの感度に調整できる面白さもありますし、トラブルシューティングの手助けにもなりますから、ぜひ半固定を使いましょう。
AGCの回路も一般的なものです。検波ダイオード(D1)は黒コイルの方に向いていることに注意してください。
受信電波が強いほど検波後に現れるDC電位が下がるので、中間波増幅段1(Q2)のベースパイアスが下がりIcが減ります。その結果ゲインが下がるので出力が一定に保たれます。
VR1を10Kに設定した時の実測値は、およそ次のようになりました。
受信強度 | D1電圧 | Q2のVb | Q2のIc |
---|---|---|---|
受信なし | 0.2V | 1.2V | 0.5mA |
弱い局 | -0.17 | 0.91V | 0.3mA |
強い局 | -0.6V | 0.56V | 0.02mA |
強い局を受信した時はQ2がOFF寸前になります。
なお、この回路ではQ2~Q4のエミッタパスコンに直列に抵抗を入れています。小さい値ですが歪低減に絶大な効果がありますのでぜひ入れることをオススメします。多くのスーパーラジオの回路では入っていませんが、この抵抗で性能に大きく差が付きます。
ただ、R7はAGCの効き具合にも影響し、値が大きいと効きが弱くなります。
夜になるとノイズ局や大陸局も含め、隙間なく受信できるようになります。
中間波増幅が二段あると帯域幅が狭いので混信には強いですが、カットされる高音域が増えるのでAMらしい丸みのある音質になります。
もう少しクリアな音質が好みの場合は、感度は落ちますが黒の同調を少しずつズラして離調することにより帯域幅を確保する方法もあります。
次は、バーアンテナ二次側位置に1000KHzの正弦波を入力して、OSCを同調した時の中間波増幅1(Q2)の出力波形です。
2mVpp(弱い地元局レベル)入力時
黄コイル二次側:約40mVpp(⊿y)
白コイル二次側:約50mVpp
中間波増幅段1は約1.25倍のゲインと計算されます。この時のQ2のVbは0.583V、Icは0.024mAでした。
結構深いAGCがかかっていることになります。
8mVpp(強い地元局レベル)入力時
黄コイル二次側:約140mVpp(⊿y)
白コイル二次側:約55mVpp
この時のQ2のVbは0.51V、Icは0.01mAでした。トランジスタがOFFになる寸前です。ゲインは0.39倍と、増幅ではなくアッテネータとして動作していることを示しています。
つまり、増幅の必要がないほど強い電波を受信したとしても、中間波増幅段1がアッテネータとして動作することで白コイルの出力が飽和すること無く一定に保たれるんですね。
AGCを切り離してQ2のIcを0.5mA流してみると、約6倍のゲインを示しました。
何も受信していない時にQ2のIcが0.5mA流れるようにVR1を設定すると、中間波増幅段1のゲインは受信波の強さに応じて1.0倍未満(アッテネータ)~6倍の間で変化することになります。
一方、黒コイルの中間波増幅段2(Q3)は他の構成と部品定数は同じですが、入出力のインピーダンスが異なっています。特に検波回路の先にはAGC(10K)がつながっていますので負荷抵抗が低くなります。その影響で中間波増幅段2のゲインは実測で35倍でした。(他の中1構成の回路では55倍)
何も受信していない(AGCがかかっていない)時の高周波部分のトータルゲインは、周波数変換部(20倍)×中間波増幅段1(6倍)×中間波増幅段2(35倍)で、4200倍になります。
この回路をさらに進化させたのが下記のラジオです。
・低周波増幅に1石追加:5石スーパーラジオ(中2低2増幅タイプ)
・低周波増幅をSEPP化:6石スーパーラジオ
高1中1低1増幅タイプ
高中低の三段階の増幅段を持つスーパーラジオとしては最も基本的な構成です。中間波増幅段があるにもかかわらず音質が良いのが特徴です。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★★☆☆☆
どの段も基本的な増幅回路で、これまでに出てきた回路を組み合わせた回路です。
やはり高周波増幅段を設けると、少し感度が上がるだけでなく明瞭な良い音になるのがすぐに判ります。無理やり増幅したというより、放送局に近づいたようなそんな感じの方向で性能がアップします。
2石スーパーラジオ(高周波増幅タイプ)でも書きましたが、この回路では高周波増幅回路で位相が反転するので、バーアンテナの二次側の極性が他とは逆になっています。また、ゲインを上げすぎると異常発振しやすくなるので欲張りすぎてはいけません。
次は、バーアンテナ二次側位置に2mVpp(1000KHz)の正弦波を入力して、OSCを同調した時の中間波出力波形です。
黄コイル二次側:約120mVpp
黒コイル二次側:約6.6Vpp
ゲインは、高周波増幅段が約3倍、周波数変換部が20倍、中間波増幅段が55倍なので、高周波部分のトータルは約3300倍になっています。
強い局を受けた時にボリューム位置に関係なくビリビリと音が割れるようであれば、感度が高すぎるので中間波増幅段(Q3)のエミッタ抵抗R9(47Ω)をもう少し大きくします。
他に、黒コイルの同調を少しズラすという手もありますが、やりすぎると弱小局が受かりにくくなります。
これ以上感度を上げるとなるとAGCが必要になりますね。
なお、低周波増幅部のゲインは約6倍です。
ちなみに、この高1中1低1増幅タイプは、4石の中では当方の一番のお気に入りです。
5石スーパーラジオ
5石構成はスーパーラジオとして中途半端な印象が強いためか、作例を見かけることはほとんどありません。多分、国内のキットでも出たことはないのではないかと思います。
5石をやるくらいなら6石にしようとなるのかも知れませんが、5石でもかなりの性能のスーパーラジオが作れます。
中2低2増幅タイプ
スーパーラジオの最小完成形(4石スーパー中2低1増幅タイプ)の低周波増幅段を、二段直結回路に増強して音量を上げたラジオです。
感度:★★★★☆ 音質:★★☆☆☆ 音量:★★★☆☆
これまで出てきた各機能の回路を組み合わせた回路で、特に新しい部分はありません。
6石スーパーで定番のプッシュプル低周波増幅に比べると、パワー感では少し劣りますが普通に聴く分には十分な感度と音量です。
強い局では、ボリューム1/3くらいの位置で限界出力まで上がるので、それ以上は音割れします。このように低周波増幅のゲインに余裕があるタイプでは、微弱な電波を聴く時のためにボリュームを上げるという使い方になるんですが、この回路にはAGCが付いているので、それもあまり意味が無いようにも思います。(AGCで感度が最大になっている時にいくら低周波増幅しても、さほど聴きやすくはならない)
ブレッドボードでの配線ですが、音量を最大に上げようがバリコンを回しまくろうが、全く発振しない安定した回路です。
野外で大音量というわけにはいきませんが、トランスが一つ不要なことを考えると、6石スーパーよりコスパの高いラジオといえるでしょう。
中1低3増幅トランスレスタイプ
中間波増幅一段で通過帯域が広いうえに、低周波増幅段にトランスレスのSEPP方式を採用しているので、音質が良くパワフルに鳴るラジオです。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★★☆ 音量:★★★★★
中間波増幅段が一つなのでAGCはありません。高周波部分のゲインは全体で約1100倍。
R8(47Ω)でゲインの調整ができます(高すぎる場合は大きくする)。小さい抵抗値ですが、少しの値で大きく影響します。
高周波部分の波形や詳細は2石スーパーラジオ(中間波増幅タイプ)を参照して下さい。
低周波増幅段のSEPP回路は、ブートストラップと負帰還付きの回路になっています。
VR2は、出力段(Q4, Q5)のアイドル電流が5mAになるように調整してください。
トランジスタによるSEPP回路では、トランスと違って低音から高音まで低歪で周波数特性もフラットです。波形や詳細は6石スーパーラジオ(中2低3増幅トランスレスタイプ)を参照してください。
放送がない所では、周辺にノイズ源がない限りボリュームを最大にしても何も聴こえないほどノイズが少ないので、電源が入っていないのかとよく勘違いしてしまいます。
この回路に高周波増幅段を追加して、さらに感度と音質を向上させたのが6石スーパーラジオ(高1中1低3増幅トランスレスタイプ)になります。
6石スーパーラジオ
スーパーラジオの完成形、最もバランスの取れた回路とされている6石構成です。
多くのラジオ回路がある中、6石スーパーの自作はラジオ自作派にとっての一つの到達目標でもあります。キットも数多く出ていましたね。
中2低3増幅タイプ
昔からあるスーパーラジオの構成で、恐らく最もよく見かけるタイプの回路です。少々古臭いトランス結合によるSEPP方式ですが、高感度で元気に鳴ります。
感度:★★★★☆ 音質:★★☆☆☆ 音量:★★★★☆
基本的に6石スーパーの定番回路ですが、この回路では歪低減などのために周波数混合部(Q1)のベースや、中間波増幅段(Q2, Q3)のエミッタのパスコンに抵抗を入れています。
また、低周波増幅段のドライバ(Q4)のエミッタ抵抗にもパスコンを設けてゲインを上げるのが普通ですが、そんなことをしても多くの放送でゲインが高すぎて、ちょっとボリュームを上げると大音量で音割れするだけなので入れてません。その方が歪が少ないです。
そういったことが幸いしているためか、この回路では普通は入れる電源ラインのフィルタを、入れなくても全く異常発振しません。
しかし、作り方次第では電源ラインからの回り込みで発振する可能性も無いわけではないでしょう。音が大きくなると発振するという場合は、この図の位置に100Ωと47uF程度のフィルタを挿入すれば解決するかも知れません。
この回路の高周波部分は4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)と同じです。波形や詳細はそちらを参照してください。
典型的なAMスーパーラジオの音質で、ガンガン鳴ります。これなら野外でもOKかも?
トランス結合SEPP回路では多めの負帰還をかけて性能を改善しています。ゲインを調整する場合は、負帰還抵抗(R16)を調整します。
激しく異常発振する場合は、負帰還の接続が出力トランス(ST-45)の二次側で逆になっているはずです。
2SC2120 は今では入手しにくくなっていますが、ICが500mA以上流せるような低周波増幅用がオススメ。後述しますが、2SC1815 では出力の上限が少し下がります。
※追記(2018/12/20)最近、秋月電子から2SC2120-Yのセカンドソース(JCET/長電科技)が発売になったようです。
ドライバトランスは入手しやすい ST-22(8K:2K)を使いましたが、ST-25A(4K:2K)でも使えます。その場合少しゲインが下がるので、R16を調整(抵抗値を高く)して上げた方が良いでしょう。
出力トランスは、低電圧でもなるべく高い出力が出せるようにST-45を使いました。ST-32でも使えますが、少々出力が低下します。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C8)から1KHzの正弦波を加えた時の出力波形。
歪のない出力の上限は1.8Vppくらいです。SEPPでない回路では700mVppくらいだったのでかなりの飛躍ですね。
もっと上げるには電源電圧を上げます。
試しに、R16を外して負帰還がかからないようにした時の波形です。
この時のゲインは約21倍。ちょっと判りにくいですが、わずかに歪がでています。
こちらは 2SC2120 の代わりに 2SC1815 を使った時の出力波形です。同じ出力電圧で比較すると、既に上限を超えて歪みだしています。
このトランス結合によるSEPP回路では、一般に低い音域の増幅が苦手です。やはりこの辺りがトランス式の限界なのかもしれません。
100Hzの信号では出力レベルも下がって、こんなに歪みます。
なお、これは負帰還を掛けてません。
この通り少しは改善しますが、オープンループゲインが低いうえに元がひどいので修復しきれていませんね。
とは言っても、それなりの性能で安定した回路ですので参考にしてみてください。
中2低3増幅トランスレスタイプ
昔ながらの6石スーパーラジオの現代版といっても良いでしょう。トランスレスSEPP方式の低周波増幅回路で、音量を上げても歪み無くパワフルに鳴りまくります。
感度:★★★★☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★★★★★
この回路は、前の6石スーパーの低周波増幅段をトランス結合によるSEPP回路からトランスレス方式にした回路で、自作にオススメの回路です。
高周波部分は4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)と同じですので、波形や詳細はそちらを参照してください。
VR1はACGの効き具合、VR3は出力段(Q5, Q6)のアイドル電流を調整します。
このSEPP回路は、自作ラジオなど小規模な出力で使われる、わりと一般的な低周波増幅回路で、ラジオ以外にもちょっとしたミニパワーアンプとして使えます。
Q4(2SC1815)はドライバ段として電圧増幅を行い、Q5(2SC2120), Q6(2SA950)は出力段として電流増幅を行っています。
また、負帰還(R13)をかけることで特性の改善を図っていて、DC的にも安定しています。ただ、ドライバ段が1石の回路ではベースに帰還することになるため、信号源の出力抵抗(Ri)がゲインに影響しやすいという弱点があります。(帰還抵抗を Rf とするとゲインは Rf/Ri になる)
そのため、出力抵抗の高い相手に繋ぐと負帰還が強くかかってゲインが小さくなりすぎたり、ボリュームの変化が急になったりすることがあります。
それから、この手のSEPP回路では、ブートストラップ有りと無しの回路があるんですが、この回路では「有り」になっています。
具体的には、ドライバ段(Q4)のコレクタ抵抗を二つに分けて(R15, R17)、そこを電解コンデンサを介して出力に接続しています。これにより、出力振幅がマイナス側に振れた時にコンデンサにチャージし、そしてプラス側に大きく振れた時でも出力トランジスタ(Q5)のベース電圧を底上げするような形になるため、より大きな振幅を出力できるんです。
C8はDC成分をカットしてボリュームを回した時のC9へのチャージ電流によるザワザワ音を解消します。他のトランス式の回路には付いていませんが、この回路では低音域の周波特性が良いため追加しました。そのため、ボリューム(VR2)が検波コンデンサ(C7)をディスチャージする役目を果たせなくなったので、検波抵抗(R12)も追加しています。
C11(470pF)は発振防止です。小容量のため音質には影響しません。このSEPP回路自体は発振しないのですが、検波回路から洩れてくる高周波成分をそのまま増幅してしまうと、ボリュームを上げた時に出力からバーアンテナに回り込んで異常発振しやすくなるので、それを防止します。
ここまでくると、市販のアナログ式AMラジオに全く引けをとらない性能になります。
しっかりした力強い感じのAM音質で、ヘッドホンで聴くとトランス式より低音がしっかり出ていて、音質もワンランク上に感じます。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C9)から1KHz(60mVpp)の正弦波を加えた時の出力波形です。
この計測ではゲインは約40倍ありますが、検波回路に接続した状態ではその出力抵抗により帰還量が増えるので、もっと少なく(十数倍くらい)なると思われます。
なお、この時の出力段のアイドル電流は標準の5mAです。
試しに、VR3を調整してアイドル電流を3mAにしてみた時の波形です。0V付近で少しクロスオーバー歪が出ていますね。
アイドル電流を1mAにしてみた時の波形。当然ですが、クロスオーバー歪が大きくなりました。
アイドル電流は、低ひずみ優先なら5mA以上、低消費電流が優先なら3mAといったところでしょうか。
歪まない最大出力の上限は3Vppくらいでした。8Ωで140mWの出力ということになります。少なく感じますがこれでも部屋で聞くとかなりの音量なので、聴き続けると近所迷惑になるかもしれません。
スピーカーは4Ωでも使えます。4Ωだと出力電力は理論上2倍になりますが、ロスなどを考慮すると実際には250mW程度になるでしょう。
もっと出力を上げるには、電源電圧を上げる必要があります。
高1中1低3増幅トランスレスタイプ
高周波増幅によるバッファリング効果と中間波増幅が一段しかないことによる広帯域性、そしてトランスレスSEPP方式の低周波増幅により、最も音質に優れたラジオです。
感度:★★★☆☆ 音質:★★★★★ 音量:★★★★★
高周波増幅部のゲインは約3倍と軽いため大幅に感度アップするわけではありませんが、放送局が近くなったようなフィーリングと、周波数変換の音質向上効果が得られます。
中間波増幅段が一つなのでAGCはありません。高周波部分のゲインは全体で約3300倍。
R9(47Ω)でゲインの調整ができます(高すぎる場合は大きくする)。小さい抵抗値ですが、少しの値で大きく影響します。
各部分はこれまでに出てきた回路ですので、詳細や波形は下記を参照してください。
高周波増幅:2石スーパーラジオ(高周波増幅タイプ)
高周波部分:4石スーパーラジオ(高1中1低1増幅タイプ)
低周波増幅:6石スーパーラジオ(中2低3増幅トランスレスタイプ)
ボリュームを上げて大音量で鳴らすと、とてもクリアで綺麗に鳴ります。異常発振も全くありません。
放送やノイズ局のないところでは、ほとんど何も聴こえないというのもポイントですね。
電波の強い放送ではFMとあまり変わらない音質です。このグレードのスピーカーで聴き比べする限り、放送によってはFMと区別が付かないでしょう。
手持ちの市販の高感度DSPラジオよりも低ノイズ(背景のサーというホワイトノイズが少ない)で音質が良いです。
こんな構成のAMラジオなんて売っていないのではないでしょうか。音の良さは中間波増幅段の少なさゆえなので、自作ならではのクォリティーと言えます。
ある程度の感度があって、音質にこだわりたい場合にオススメの回路です。
7石スーパーラジオ
5石構成ほどではありませんが7石もあまり見かけない構成です。6石の次は8石となることが多いようです。
昔の話ですが、どこだったか7石スーパーラジオキットが販売されていたことがありました。6石よりスゴイのが作れると思って期待したのですが、SEPPのバイアス回路がトランジスタになっているだけの回路だったのでガッカリしたことを覚えています。
これで、6石が7石に・・・
ダイオードで置き換えできるようなところでトランジスタが増えても大して嬉しくないですね。
話がそれましたが、ここでは6石スーパーラジオ(中2低3増幅トランスレスタイプ)のSEPP低周波増幅段に1石追加した標準的な回路をご紹介します。
感度:★★★★☆ 音質:★★★☆☆ 音量:★★★★★
SEPP回路のドライバ段に1石追加(Q4)したことによって、裸のゲインが高くなっていますが、実際には約10倍のゲインとなるように負帰還(R16, R18)を掛けています。
4石もあるのでもっとゲインを上げてガンガンに鳴るようにもできますが、この回路では電源電圧が5Vなのでどう頑張っても歪のない出力は3.1Vpp(8Ωスピーカーで約150mW)までになります。
そういう意味では3石のSEPP回路でも良いのですが、ここでは電源電圧を上げてより高出力のスーパーラジオを作るための参考となるべく公開しています。
また、オープンループゲインが高いと負帰還が深く掛けられるため、より性能の良いアンプに仕上がっています。
6石のトランスレススーパーラジオの増強型。
音量が少し上がり歪みも少なくなっています。
詳細や波形は下記を参照してください。
高周波部分:4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)
低周波増幅:8石スーパーラジオ
8石スーパーラジオ
8石スーパーは自作アナログラジオの終着点と言っても良いかも知れません。国内のスーパーラジオキットでは、これを超えるものは出たことは無いようです。
ここでは、8石スーパーラジオキットでも採用されていた標準的な構成をご紹介します。
感度:★★★★☆ 音質:★★★★☆ 音量:★★★★★
6石スーパーの周波数変換部に1石追加して他励式にし、SEPP回路のドライバ段に1石追加して、全部で8石にした回路です。
他励式にしたことにより6石スーパーより音質が明瞭になり、低周波増幅のクオリティーもワンランクアップしています。
VR1は、AGCのかかり具合を調整するもので、放送がない所でQ3のIcが0.5mA~1mAになるところが大体の目安です。
VR3は、SEPP出力段(Q7, Q8)のアイドル電流が5mAになるように調整します。
高周波部分はこれまでに出てきた回路と同じですが、一部の部品定数を変更しました。
まず局発部ですが、2石スーパーラジオ(他励式混合タイプ)の部品定数では、発振波形に若干の歪みと、バリコン位置による発振レベルの差があるので改善しています。
トランジスタは 2SC1815-GR を使用。Icを上げているので、信号レベルも高いです。
消費電流が3.8mA(発振中の実測値)とやや多くなりますが、8石のハイエンドモデルということで妥協します。
レベル差は約0.2Vppと、8%の増加に抑えられています。2石スーパーラジオ(他励式混合タイプ)の回路では約50%の増加だったので、まずまずといったところですね。
混合部のトランジスタ(Q1)には 2SC1923Y を使いました。2SC1815 よりも若干感度や音質が上がって良好です。ここはぜひ高周波用を使いましょう。
また、自励式よりもゲインが少し小さくなりますので中間波増幅段1(Q3)のパスコンのエミッタ抵抗(R10)を、他の回路より小さい47Ωにしてゲインを上げました。
これらの抵抗を取り去るとさらに感度アップしますが、その代わり内容の良く聞き取れない遠方局が増えたり、ノイズ局や背景ノイズが増えたり軽く発振する局が出てきたりと、やたら騒がしいラジオになりますのでオススメできません。
中間波増幅の詳細は4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)を参照してください。
低周波増幅段のドライバ段が2石になったことによりオープンループゲインが高くなったので、電源にフィルタ(R16とC12)を入れています。これがないと、ボリュームを最大にして音量を上げた時に軽く発振します。(配線の引き回しなどにもよると思います)
帰還後のゲインはオペアンプの非反転増幅と同じで、(R19 + R21) / R19 の式で計算できます。(ロスがあるので実際にはこれより少し小さい)
これは、負帰還を掛けないオープンループでの無負荷時の出力波形です。
ドライバ2段により540倍ものゲインがありますが、ノイズがのっているうえに負荷を接続すると大きく歪みます。
次は、スピーカーの代わりに8Ωの抵抗を接続し、低周波増幅の入力(C13)から300mVppの正弦波を加えた時の出力波形です。
ほぼ設計通りの約10倍のゲイン。
帰還量が多いので、キレイな波形が3.1Vpp(150mW)まで出力できます。
4Ωのスピーカーなら270mW程度まで出力できるでしょう。
トランスの100Hzでは歪みまくっていましたが、トランスレスの回路ではこの通り。
少しゲインが下がっていますが、結合コンデンサによるもので回路自体の周波数特性が悪いわけでないです。
高音域でも問題ありませんね。
回路が少し複雑になってきましたしゲインも高いので、配線の引き回しには注意が必要です。各増幅段ごとにまとめて、さらに高周波部分と低周波部分をそれぞれまとめて、最終的に一点で接続するのが理想です。
9石スーパーラジオ
当記事の中で最高峰のスーパーラジオです。信号増幅に関わるトランジスタは9石ですが、その他を含めると全12石+LDOの回路です。Sメータ付きで、電池残量に影響されない安定した性能を誇ります。この回路はプリント基板を自作してケースに収めました。
感度:★★★★★ 音質:★★★★☆ 音量:★★★★★
これまでに出てきた回路の集大成です。
まず、小信号回路の電源を定電圧化しました。大音量で鳴らしても電源伝いの回り込みがなく安定しています。また、ゲインやAGC特性が電池電圧に影響されません。
定電圧回路はトランジスタでも組めますが、部品数や性能などを考えてLDOを選択しました。ただ、ドロップアウト0.3Vで4.5Vが出せる手頃な品種がなかったので、秋月電子で売っていた XC6202P332TH(3.3V 150mA)を使って4.5Vを作っています。他には LP2950L-3.3V(3.3V 100mA) などが使えます。
高周波部分はこれまで出てきた回路と同じですが、バーアンテナの二次側の極性が、他の高周波増幅段のある回路とは違って逆になっています(そうしないと発振します)。
あと、電圧が4.5Vに下がった分、トランジスタのバイアス抵抗なども変更しました。
Q2にラジオ用の 2SC2787 を使っていますが、2SC1923-Y などでも使えます。
波形や詳細は以下を参照してください。
高周波増幅:2石スーパーラジオ(高周波増幅タイプ)
他励式混合:8石スーパーラジオ
中間波増幅:4石スーパーラジオ(中2低1増幅タイプ)
低周波増幅:8石スーパーラジオ
この回路では、検波後の出力にローパスフィルタ(R17, C12)入れて残留高周波をカットしています。
検波後の音声信号を拡大してみたところ。約30mVppの残留高周波が残っています。
一般に検波後にLPFを入れるのは、この高周波成分が低周波アンプで増幅され、バーアンテナなど前段に回り込んで異常発振やノイズ源にならないようにするためです。
当製作記事では、この問題を防ぐために低周波アンプの高周波特性を落としているのでLPF無しでも問題ないのですが、この9石スーパーでは一応入れました。
それから、低周波増幅のSEPP回路では、これまでバイアス電圧の生成にダイオード(1N4148✕2)を使ってきましたが、この回路ではトランジスタ(Q10)を使っています。こちらの方が安定性などで一応優れています。
VR5で出力段のアイドル電流が5mAとなるようにします。
トランジスタによるSメーター駆動回路は、超シンプルな差動方式で、調整方法も簡単。
AGCの調整(VR1)が終わったら、バリコンを放送がない位置に回してVR3でメーターの針が振れ始めの状態(目盛り一つくらいの位置)にします。
そして最強の放送を受信した時、針が最大位置に振れるようにVR2で感度調整します。
AGCが効いているため、実際には最大か最低かのどちらかになることが多いです。
メーターは秋月電子で売っているVUメーター(感度500uA)を利用しました。
この製作例では、180cmのロングフェライトバーアンテナを採用し、高品位フルレンジスピーカーと、ラジオとしては大きめエンクロージャー容量を確保したことで、高感度&低ノイズで聴きやすく、迫力ある音質が楽しめます。
ER-C56Fと聴き比べてみても、アナログ的なフィーリングはこちらの方が上です。
もちろん、分離性能やデジタルのチューニング性、利便性には負けますけどね。
ER-C56F お手頃な市販の高感度DSPラジオ。しかし本作と比べる限り、感度はやや劣り、ホワイトノイズが多く音質は悪いです。 |
正直、高々9石のスーパーラジオでDSPラジオに勝る部分があるとは思いませんでした。
XDS3202A 最大1GS/s 14bitAD 200MHzバンド幅のデジタルオシロスコープ。タッチ式スクリーンは広くて見やすいです。 |
製作手順
※パターン図など必要なファイルはダウンロード・参考に置いてあります。
今回は表面実装部品は一切なしで作りました。基板は、100x150x1.6tの紙フェノール感光基板を使って作ります。
より詳しく⇒プリント基板の自作!感光基板を使った作り方で簡単製作
「9石スーパーラジオ基板.pbf」をmikanで開いて、外形、hole、solder、裏B、裏C の5つのレイヤを、サンハヤトの感光基板専用インクジェットフィルムに印刷します。
緑色は銅箔、黄色は部品外形、灰色はジャンパーなどを表す補助線です。
穴あけとカッティングが完了したところ。
この後、フラックスをうすく塗って完了です。
バーアンテナホルダは、aitendoの「D10-HOLDER-B」
余分な足は抜いておきます。
バーアンテナは「2V59M」のコイルと180cmのフェライトバーを使いました。1次側の容量が増えるので、約25ターンほどいて580uHにしています。巻線比が5:1なので、二次側も5ターンほどきました。
フェライトバーはaitendoやKURAなどで手に入ります。
使ったスピーカーは、 GRAIN AUDIO の2インチ(57mm)スピーカー。
この品質で¥980なんですよこれ。もう即買いレベルです。
GRAIN AUDIO 2インチ(57mm)スピーカーユニット 4Ω/MAX15W
ここまで来たら動作チェックできます。バリコン、スピーカー、電池を繋いで電源O~~N!
この時点で一通り調整を済ましておきますが、バリコンのトリマはケースに組み込んでからも微調整できます。
Sメーターとして使う、秋月のアナログメーター DE-1434は、見た目を変更します。
セロテープでカバーが固定されているので剥がしていきます。
目盛版をスキャンして、ペイントソフトで加工し、光沢紙に印刷したのが水色の方です。
※ファイルはダウンロードに置いときます。
600dpiで印刷してください。
下のカーブっている部分は、元の目盛板をあてがってカットすると良いです。
後で思ったのですが、目盛部分は青より緑の方が良かったような・・・昔の無線機って緑が多くなかったでしたっけ?まぁええか。
バリコンつまみの加工です。
パーツ屋で売ってるあの小さなダイヤルでは選曲しにくいし、ありがち過ぎてダサいというかなんというか・・・なので、アクリル丸板(Φ50x3mm)を使いました。
まず、真ん中にΦ2.5で穴を開けます。
Φ4.5で深さ2mmをえぐって、M2.5x5mmのビスで留めます。
フチをヤスリで丸く仕上げても良いですね。
ステレオジャック MJ352WC とスピーカーはこのように配線します。
足は曲げた方がやりやすい。
タカチのプラケース PB-4 の加工です。
「9石スーパーラジオ外形.pbf」をmikanで開いて印刷し、マスキングテープで留めます。
キリで各穴をマークしたら、
バリコンを取り付ける二つの小穴は、Φ2.5で穴を開けた後、Φ5のドリルでさらうんですが、ここは手で回したほうが安全です。
スピーカーの大穴は、このようにコテで切り抜いてヤスリで仕上げる作戦でやってみましたが、あまりオススメできません。
やはり、ドリルでぐるりとたくさんの小穴を空けてつなげて行くやり方が良いと思います。
ケースに組み込む前に、基板の角を丸く削っておきます(ケースの内側が丸くなっている)
この作業は基板を作る時にやっておくべきですが、今回はこの時点で気づきました。
これで完成。基板とケースは25mmの六角スペーサーで固定します。
メーターは、基板に両面テープで固定してから直接ハンダ付けします。
バリコンのトリマは、この状態でも調整できるようになっています。
電池の固定や裏蓋の固定をあまり考えていませんでした。この時点ではとりあえず両面テープとマスキングテープで留めています。まあなんとかなるでしょう。
ケースサイズが大きめなので組み立てやすいです。
ラジオの部品
スーパーラジオの自作に必要な部品についてです。
当製作記事で使用している部品も解説しています。
バーアンテナとバリコン
バーアンテナとバリコンには、それぞれストレートラジオ用とスーパーラジオ用があります。両者では容量が異なるので、当然スーパーラジオ用の組み合わせで使います。
普通は二次巻線があるものを使います。
・一次側のインダクタンス:600uH程度
・二次側のインダクタンス:10uH~30uHくらい ※AMラジオ用のバーアンテナであれば大抵はこの範囲に入っているので特に気にする必要はないです。
・二連バリコン(親子バリコン)
・ANT側:150pF程度(最大)
・OSC側:70pF程度(最大)
当記事で使っているバリコンとバーアンテナです。
バーアンテナ:2V59M(AL-1P80-DJK)
ポリバリコン:PVC-80170
共立エレショップで手に入れたものです。
2V59Mのコイルはインダクタンスがやや高く、フェライトコアの端の方に持ってこないと600uHになりません。もちろんそれでも良いのですが、当記事の製作ではフェライトを標準の8cmから手持ちの10cmに付け替えて使っており、その結果容量が増えたので、一次側を20ターン、二次側を5ターン程度ほどいて使っています。
PVC-80170は、170pF+80pF として売られていますが、調整用のトリマを中央にした状態での実測値は 154pF+70pF でした。複数買ってチェックしましたが全部同じで、バーアンテナのインダクタンスと受信周波数から考えても、後者のほうが正解です。
より詳しく⇒バーアンテナの使い方と選び方!回路とインダクタンス
IFTとOSC
AM用のIFT/OSCコイルは一時期は入手しやすかったんですが、徐々に消えつつあります。
昔は青や緑もありましたが、最近ではほぼ見かけません。中国製ではピンクなど変わった色のも見かけますが詳細不明です。
大きさには7mm角と10mm角があって、7mm角の方はユニバーサル基板にも挿せることから人気があったらしく、すぐに絶滅危惧品種になってしまいました。
10mm角のものなら千石電商やマルツなどでも手に入ります。
次の表は、とある品種でのインダクタンスの実測値などをまとめたものです。メーカーが違っていても、色が同じならば大体同じだと思われます。
コイル | 一次側 | 二次側 | 一次側 | 二次側 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
黄色 | 680uH [1-2]408uH [2-3]34uH | 0.7uH | [1-2]124T [2-3]36T | 5T | 180pFの同調Cを内蔵。最もQが高く選択度が高いが、出力電圧が小さい。 黄:データシート |
白色 | 680uH [1-2]333uH [2-3]61uH | 0.7uH | [1-2]112T [2-3]48T | 5T | 180pFの同調Cを内蔵。黄よりややQが低いがゲインを高くできる。黒より黄に近い。 白:データシート |
黒色 | 680uH [1-2]322uH [2-3]66uH | 35uH | [1-2]106T [2-3]48T | 35T | 180pFの同調Cを内蔵。検波用に高い電圧を取り出せる。出力抵抗は5K程度が目安。 黒:データシート |
赤色 | 360uH [1-2]0.5uH [2-3]330uH | 4.1uH | [1-2]4T [2-3]99T | 11T | 局部発振用で同調Cはなし。二次側をコレクタに接続する発振回路用に設計されている。 赤:データシート |
コアの位置ですが、当方の経験上、どのコイルも大体の規定値に調整して販売されているようです。ディップメーターなどの機器が無くて同調周波数が全く判らないという場合は、闇雲に回さない方が良いでしょう。
IFTの裏にある筒状の同調コンデンサ。
どこかで温度補償タイプだと書かれているのを見たことがありますが、未確認情報です。
参考までに、コイルを分解したところです。
どの色もこんな感じです。
セラミックフィルタ
当記事では使っていませんが、中間波増幅段にセラミックフィルタを入れた回路を時々見かけます。
セラミックフィルタを使うと、中間波増幅段を通過する周波数帯域を狭くすることができる、つまり455KHzを外れた周波数が通りにくくなるため、選択度が高くなって混信に強くなります。
でもそれは、音声信号の高音域が通りにくくなるということでもあり、クリアさが失われてこもったような音質になることを意味します。
「AMはFMと違って振幅変調だし、周波数は一定だから関係ないんじゃね?」
私も子供の頃はそう思っていましたが違うんです。振幅変調された電波は、中心周波数(キャリア)と、音声信号の周波数だけ±した成分が混ざりあった信号になっています。
例えば、ピーという10KHzの正弦波で振幅変調された中間波(455KHz)は、445KHz + 455KHz + 465KHz の信号になっています。これを、セラミックフィルタで 455KHz ±7.5KHz の帯域だけ通すようにしたとすると、10KHzの正弦波成分も減衰します。
このように、選択度と音質(周波数特性)はトレードオフの関係にあるので、それを考慮した上でセラミックフィルタの利用を検討します。
代表的なAM用のセラミックフィルタ(CFU455B 10±3KHz)の周波数特性。
品種によって帯域幅や特性カーブが異なります。
IFTとセラミックフィルタを併用する回路例。
黄や白コイルの場合、Riはセラミックフィルタの入力インピーダンスと同じくらいの値(通常1.5K~2K程度)にします。
Roは、接続先の回路(RL)との並列接続で、セラミックフィルタの出力インピーダンスと同じになるように決めます。普通はトランジスタへの入力回路に繋がりますが、4.7K程度に落ち着くことが多いです。
さほどシビアになることもないのですが、入出力インピーダンスがマッチしていないと、フィルタの中心周波数がズレてきますので注意が必要です。
トランジスタ
高周波回路用
自作のAMラジオでは 2SC1815 がよく使われていますが、これよりもっと高周波のトランジスタを使うと性能がアップするのでしょうか?
トランジスタのIcを変えるなど色々条件を変えて試してみた結果、他励式の混合回路では、2SC1815 より高周波用のトランジスタを使った方が少し感度や音質が上がって良好な結果が得られました。なので、当製作記事の他励式混合部では、2SC1923Y などの高周波トランジスタを使っています。
今でも入手しやすく汎用的に使えるオススの高周波トランジスタ 2SC1923。
VCE:30V Ic:20mA fT:550MHz
自励式の周波数変換部では、単純に差し替えただけだと性能に差が出るように見えますが、Icや部品定数を調整すると結局どのトランジスタでも似たり寄ったりになります。発振と混合を同時にやっている関係で、そう単純に優劣が決まらないのかもしれません。
それから、中間波増幅段ではあまり違いは出ないです。これは、周波数が455KHzと低いことと、増幅回路の特性によるものと考えられます。
増幅回路のゲインは(明らかに不適合でない限り)トランジスタの fT や hFE ではなくて、回路やその定数によって決まるところが大きいです。ゲインは、コレクタの負荷抵抗をRc、エミッタ抵抗を Re、内部エミッタ抵抗を re とすると、Rc / (Re + re) で表されます。re はそのトランジスタに流す Ic で変化し、どの品種でも 26 / Ic(mA) です。
よく誤解されているようですが、一般的なAMスーパーのAGCはこの re が変化する性質を利用したもので、hFEの変化でゲインをコントロールするわけではありません。もしそうなら、hFEがほぼ一定という特徴を持つ 2SC1815 では、AGCはほとんど効かないことになってしまいますが、実際には良く効きます。
下は、ラジオ用や高周波回路に使える代表的なトランジスタ(TO-92)の例です。
低周波回路用
低周波増幅ならやはり 2SC1815 が定番なんですが、問題はSEPP出力段に使うコンプリメンタリのトランジスタです。というのも、SEPP出力段で手軽に使える日本製のTO-92型トランジスタが、市場から消えつつあるからです。
以前は、2SA950/2SC2120 や、2SA562TM/2SC1959 あたりが代表的だったんですが、今ではすっかり入手しずらくなってしまいました。
※追記(2018/12/20)最近、秋月電子から2SC2120-Y/2SA950-Yのセカンドソース(JCET/長電科技)が発売になったようです。
当製作記事では電源電圧は5V前後ですが、トランスレスSEPPの場合、最大出力電圧は3.5Vpp以上になりますので、Icは約400mA以上流せる品種が目安となります。
((3.5Vpp / 2 / 8Ω) * 2)※ギリギリよりも余裕がある方が歪が少ないです。
秋月電子で扱っている中では、8050SL-D-T92-K/8550SL-D-T92-K も使えそうです。
なお、TO-92型にこだわらなければ入手性の良いコンプリメンタリは結構あります。
検波ダイオード
ラジオの自作ではご存知ゲルマニウムダイオードの 1N60 が有名ですが、さすがにもう古いので代わりにショットキーバリアダイオードを使うのがオススメです。
しかし巷では「ショットキーバリアよりも 1N60 の方が歪が少なくて良いんだ!」とする 1N60 信者が存在しています。実は当方も以前は信者でした。
でも、色々なショットキーバリアを試しているうちに、明らかに 1N60 より優れていると思えるものがあったため、信者をやめることにしたんです。
当記事の全ての回路では「BAT43」というショットキーバリアを使っています。このダイオードは 1N60 より検波出力が高く、微弱電波でも音割れが少ないです。しかも、汎用品種で入手性も良いので使わない手はありません。
BAT43 は複数のメーカーからセカンドソースが出ています。青いのは、以前秋月電子で売られていたSTMicor製のもの。下のは現在売られているものですが、同じ BAT43 です。
他には、例えば次のようなショットキーバリアも一般的ですね。
・1SS108:1N60とほぼ同じで、聴いた感じ区別が付かない。
・SD103A:残念ながら、明らかに 1N60 より劣る。
表面実装品ですが、高周波用ショットキーバリアダイオード 1SS154 もオススメです。
AGC付きの回路ではシリコンダイオードも使える
中間波増幅が二段のスーパーラジオ回路では普通AGCが付いています。AGC回路では検波ダイオードに常にバイアス電圧がかかっているため、順方向電圧の制約がありません。
順方向電圧は、ゲルマニウムやショットキーバリアでは0.1~0.2V、普通のシリコンダイオードでは0.4~0.6Vですが、バイアスが掛かっている状態では両者とも0V付近の低電圧信号から検波できることになります。
ただし、元々ゲルマニウムを使っていた回路で単純にシリコンに置き換えるというケースでは、中間波増幅段のトランジスタのバイアス電圧も約0.4V上昇するため、設計意図から外れてしまうかも知れません。同時にバイアス抵抗の調整も必要でしょう。
検波効率ってどのくらい?
参考までに、AM中間波(455KHzキャリアに対し1KHz正弦波を変調率70%で変調した信号)を、代表的な検波回路(1N60)で検波した時の出力の実測値を掲載しておきます。
※DC成分:無音時のDC電圧
入力(IN)は、黒コイルの二次側に接続しました。
入力 | 出力 | 効率 | DC成分 |
---|---|---|---|
0.2Vpp | 14mVpp | 7% | 11mV |
0.5Vpp | 87mVpp | 17% | 79mV |
1Vpp | 268mVpp | 27% | 257mV |
2Vpp | 670mVpp | 34% | 654mV |
3Vpp | 1060mVpp | 35% | 1060mV |
0.2Vあたりを下回ると検波できなくなるのは一般的に言われている通りですね。
十分な入力レベルがあるとき取り出せる音声信号は、入力の約3割程度になります。
トランス
自作ラジオの低周波増幅では、よくトランスが使われます。性能はともかく、わりと簡単な回路でスピーカーが鳴らせるからですね。昔からある伝統的な回路ですので、古き良き時代の回路を使うことの意義もあります。
元祖山水のSTシリーズが有名ですが、その互換品として廉価なSDシリーズ(メーカー不明)も出回っています。このSDシリーズは、STシリーズよりコアの品質が悪いという報告もありますが、普通に聴いた感じでは違いはわかりません。極限状態で使うとか、測定器を使わないと判別できないレベルなのではないかと思います。
品種 | インピーダンス | 備考 |
---|---|---|
ST-30 SD-30 | 12.5K:50K | 昔のクリスタルイヤホン(ロッシエル塩タイプ)用のアウトプットトランス。ロッシェル塩は今では手に入らないので注意。 |
ST-32 SD-32 | 1.2K:8Ω | スピーカー用のアウトプットトランス。 最も標準的で有名なトランス。ST-45の代わりにも使える。 |
ST-45 SD-45 | 600Ω:10Ω | スピーカー用のアウトプットトランス。 ちょっと出力が高い回路向け。ST-32の代わりにも使える。 |
SD-108 | 10K:8Ω | スピーカー用のアウトプットトランス。 巻線比が高いのが特徴。STシリーズにはない。 |
ST-22 SD-22 | 8K:2K | ドライバートランス。トランス式SEPP回路のドライバ段(入力)で使う。ST-25の代わりにも使える。 |
ST-25 SD-25 | 4K:2K | ドライバートランス。トランス式SEPP回路のドライバ段(入力)で使う。ST-22の代わりにも使える。 |
これらのトランスは古い部品で供給が少ないため1個¥500くらいと割高ですが、今の所は手に入りやすいようです。秋月電子、コスモ電子、マルツなどにもあります。
トランスは音が悪い!?
ラジオの自作記事を見ていると「トランスを使うと音が悪い!」とよく言われています。確かに歪率的には悪くて、数百Hzくらいから下の低周波領域では特に悪化する傾向があります。ただ、中高音域ではそんなに悪いというわけでもありません。
AMラジオの音声信号を、低域が苦手な小型スピーカーを使ってトランジスタ方式と聴き比べてみても、簡単には区別できません。現実的にはその程度の差しかないんです。
ただ、トランス回路は効率が悪いので、電源電圧に対して歪み無く出力できる上限が低いのも欠点です。ST-32 を使った場合だと、電源電圧の1/10にも満たないでしょう。
なので、音が小さいなと思ってボリュームを上げても、1次側を駆動するコレクタがすぐ飽和して音割れするので、これが「トランスは音が悪い」となるわけです。
トランスを使った回路は音が悪いというか、限界値が低いということなんですね。
イヤホン
スーパーラジオはスピーカーで鳴らすのが主流ですが、トランジスタの少ない回路では検波出力をそのまま聴くことになるため、クリスタルイヤホンを使います。
クリスタルイヤホンには、昔のロッシェル塩タイプと現代のセラミックタイプがあり、インピーダンスが異なります。
・ロッシェル塩タイプ:50KΩ程度
・セラミックタイプ:10KΩ程度
現代のセラミックタイプのクリスタルイヤホン。昔のものと外見は全く同じなんですが、中身は別物です。
ロッシェル塩タイプはインピーダンスが高くて高感度ですが、今ではほぼ入手不可能です。
ネット上のラジオの自作記事では、昔のクリスタルイヤホンが前提になっている「古いままの回路」をよく見かけます。本来の感度が出ていないことも多いと思われます。
普通のヘッドホンで聴く
出力トランスを使ってインピーダンス変換を行うと、スマホなどで使うヘッドホンで聴くこともできます。音量はクリスタルより若干小さくなりますが低域も出るので太く良い音になり、両耳で聞くとかなりイイ感じで聴こえます。
1石スーパーラジオでの例。
10Kの検波抵抗は外します。一次側インピーダンスの高い SD-108 がオススメ。ST-32 は、検波出力に繋ぐにはインピーダンスが低いのでイマイチです。
これの原理は、繋げられなかったものが繋げられるようになるだけのようなもので、出力電力がアップするわけではありません。
黒コイルからの出力インピーダンスは約5KΩ程度なので、SD-108 の中間タップを使った時が最も綺麗に聴こえます。
電波の強力な地元局なら、スピーカーでも小さい音で鳴ります。
スーパーラジオ調整方法
スーパーラジオは調整が命です。しっかり調整しないとせっかくの周波数変換や中間波増幅などが全て無駄になり、簡単なストレートラジオにもあっさり負けてしまいます。
同調周波数範囲
受信周波数範囲が、AM放送の範囲531KHz~1602KHzをカバーするように調整します。
IFTの調整
黄/白/黒コイルが、455KHzに同調するように調整します。
ただ、購入直後は調整されていることが多いため必ずしも必要ではありません。
トラッキング調整
バリコンがどの位置にあっても、同調周波数と局発周波数の差が常に455KHzとなるように調整します。(531KHz同調:局発986KHz、1602KHz同調:局発2057KHz)
・IFT(黄/白/黒)
・バーアンテナのコイル
・OSC(赤)コイル
・バリコンのOSCトリマ
・バリコンのANTトリマ
調整は、低い受信周波数と高い受信周波数で行うんですが、低い方ではコイルの調整を行い、高い方ではトリマの調整を行うのが鉄則です。周波数が高いほど少しの容量変化で周波数が大きく変化するので、容量が小さいトリマを調整するわけですね。
調整手順
まず最初に、バリコンのOSCトリマとANTトリマを中央にしておきます。
ディップメーターなど、IFTを正確に455Kに調整できる機器がある場合は、先に黄コイルを調整します。できない場合は無理して触る必要はありません。白や黒もやっておくことに越したことはないですが、後でも大丈夫です。
なお、IFTは調整して売られていることが多いので、そのままで良い場合も多いです。
バリコンを低い位置に回し、受信できるはずの最も周波数の低い放送局がなるべく大きく受信できるように、バーアンテナのコイルの位置と、赤コイルの二つを調整します。この時のバリコンの回転位置もその周波数位置に合うようにします。(これは大体で良い)
LCメーターでバーアンテナとバリコンの容量が確認できるなら赤コイルだけでOK。
より詳しく⇒バーアンテナの使い方と選び方!回路とインダクタンス
放送を受信しながら音量が一番大きくなるように調整します。これは黄に合わせること、つまり455KHzに合わせることと同じです。
ポイントは、黄も含めてIFTの調整は原則一度だけにすること。手順を踏まずに適当にやり直しているとハマりますので注意してください。
なるべく周波数の高い放送局を受信して、なるべく音が大きくなるようにバリコンのOSCトリマとANTトリマを交互に調整します。特にこの調整が感度を大きく左右します。
もう一度②と④を繰り返して終わりです。
コイルもそうですが、特にバリコンのトリマは敏感です。ほんのちょっと回すと大きく変化しますので、最適な所に合わせるのは結構根気がいります。
音が良くなる!?IFTの調整方法
中間波増幅段(IFT)が増えるとその分通過帯域が狭くなるので、高音域が減衰してこもったような音質になります。これが、AMらしい温かみのある音でもあるんですが、逆にクリアで明瞭な音質が好みの人もいるでしょう。
複数あるIFTを完璧に455KHzに同調するのではなくて、IFT(黒)さらにはIFT(白)をちょっとだけズラす(離調)ことで、感度は落ちますが通過帯域を広くして音質(周波数特性)を改善することができます。
ズラす場合、黄白黒3つ全てをズラす意味はありません。普通は黒だけ、または白と黒を互いに逆方向に離調します。ずらし過ぎは音質が劣化するのでほどほどに。
●感度が高い。
●選択度が高いので混信に強い。
▲選局が敏感なので合わせづらい。
▲こもったような音質。
▲感度が低い。
▲選択度が低いので混信に弱い。
●選局が甘いので合わせやすい。
●クリアで明瞭な音質。
高音域が多いとクリアに聴こえるんですが、電波の弱い場合などではノイズが耳に付きやすくなる傾向もあります。
異常発振を防ぐ方法
自作ラジオは、放送音に混じってピ~音が聴こえるものだと思っていませんか?
私も昔はそう思っていました。でもそれは誤解です。
自作だろうが正常なラジオは基本的にピーピー鳴りません。隣接した放送波がある場合はビートが聴こえることもありますが、昼間など海外放送があまり受からない時はそんなにかぶることはなく、大抵はラジオ側の異常発振が原因なんです。
大きな音でピーとかギャーとかザーとか聞こえる場合は初心者でも異常と分かるでしょうが、バリコンの位置に合わせて小さく聴こえるピュ~音などは「こんなもの」という思い込みから、あまり気にされることもないようです。
残念ながら根本的に治らないケースもありますが、諦める前に次の対策を検討してみてください。これらで治ってくれることも多いです。
放送を受けるととにかくピーピーなるような場合、まず試して欲しいのがこれです。二次側の配線を逆にするだけで、あ~ら不思議!ピタッと収まることが結構良くあります。
トランジスタが持つ入力容量を利用して不要な高周波をカットするというもので、効果がある時はピタッと収まります。
ただし、あまり大きな値にすると感度が下がるので100Ω~330Ω程度が適切です。
ノイズを低減する効果もあるので、当記事ではほぼ全ての回路に入れてあります。
トランジスタのエミッタのパスコンに、直列に抵抗(10Ω~470Ω)を入れてゲインを下げます。この抵抗は歪低減効果もあるので、当記事ではほぼ全ての回路に入れてあります。
慣れないうちは発振の原因が高周波側にあるのか低周波側にあるのかも判らないと思いますが、とりあえず中間波増幅段に入れてみてください。
また、トランジスタのバイアス(ベース)電圧を下げてIcを減らすという方法もあります。Icを減らすとゲインも下がります。
パワーアンプは別として他の増幅部分では、Icは1~2mAもあれば大抵は大丈夫なハズ。やたら大きな電流が流れている場合は要注意です。
大きな音を出すと発振するという場合の対策です。
一つは、低周波増幅と高周波増幅を分断する形で、抵抗(100~220Ω程度)とコンデンサ(47~100uF程度)によるフィルタを挿入するという一般的な対策です。8石スーパーラジオの回路を参考にしてみてください。
もう一つは、電源やグランドの引き回しの改善です。
各増幅段への電源供給は、プラス側もマイナス側もそれぞれ一点から分岐させるのが理想です。しかし、現実的には難しいので、なるべくそれに近い形になるように配線します。
放送がなくて無音なのに、ボリュームを上げると発振するという場合の対策です。
低周波増幅段の入力前にCRローパスフィルタを入れたり、トランジスタのベース-コレクタ間に帰還コンデンサを入れたりしてみてください。出力とグランドの間にコンデンサを入れてバイパスさせる方法も、場合によっては有効です。
局発周波数は、およそ 986KHz~2057KHz の範囲内にあるはずですが、この範囲から大きくズレると異常発振することがあります。バリコンの最小又は最大付近で発振する場合は、局発(赤コイル)の調整を確認してみましょう。
以上が主な対策方法です。
強い異常発振を放置していると、IFTが焼けて焦げ臭くなってくることがあります。部品を傷めるので、なるべく早く電源を切るようにしましょう。
ラジオ実験セット
当製作で使っている、自作のスーパーラジオ用プラットフォームです。
百均で売っていた桐のまな板をベースに、ブレッドボードや関連パーツを取り付けました。
ちなみに、こういうものを作る場合、電源には必ずリセッタブルヒューズを入れといた方が良いです。ここでは、秋月で買った 0.5A(1Aで遮断)のものを使っています。
バリコンやバーアンテナを標準装備。ただ、これだとバーアンテナを取り替えて手軽に試すようなことにはかないのでした。
定規は、百均のものをカットしたもの。
丸い円柱はスピーカーです。Φ5cmの小型スピーカーを、ハンズで見つけたクラフト用の竹筒にハメ込んでみたらピッタシ!
これを手芸屋?で手に入れた?布生地でくるんでもらいました。
何でもブレボのせいにしない
ブレッドボードでラジオの回路を組むと、その浮遊容量で性能が出ないとか異常発振するといった記事を見ることがありますが、多くの場合それはブレボのせいではありません。AMラジオの場合、関係ないことはないですがあまり影響することはないはずです。
当方の実測値では、隣接する挿入口間で約4pFの容量がありました。
とりあえず、次の二点に注意しておけば大丈夫でしょう。
高周波を扱うトランジスタのベースとコレクタを隣接させずにひとマス開けます。ミラー効果やCob(コレクタベース間容量)の上乗せによる高周波特性の劣化を防ぎます。
数pFの容量が高周波帯での発振周波数に影響します。でも、バリコンのトリマ(OSC)で吸収できる範囲内なら問題ないでしょう。
問題はIFT/OSCだ!
IFT/OSCはそのままではブレッドボードで使えないので、専用の変換基板を作りました。
秋月で売っている細ピンヘッダをパターン面に立てて、根元でハンダ付けします。
ラジオペンチで樹脂部分を押し付けます。熱いうちにやると良い。
IFTの場合はプラス側に、OSCの場合はマイナス側に挿入。シールドケースと5ピンの真ん中も支えピンに接続されているので、電源への接続ポイントが増えます。
参考までに、この変換基板と他の全ての補助基板を含むパターン図(75x100mm)をダウンロード・参考にて公開しておきます。
スーパーラジオキット
かつて昭和の時代にはたくさんあった日本製のラジオキット。HOMERやCHERRYといったブランドを知っている方は団塊の世代でしょうか。
そういった味のあるキットも今ではほとんど見られなくなり、代わりに中国製のものが多くを占めています。
ここでは、完全ディスクリートのスーパーラジオキットをご紹介します。
6石スーパーラジオキット 検波回路がエミッタフォロアタイプのトランジスタ検波になっています。あまり見ない回路ですがいいかもしれません。 |
6石スーパーラジオキット ケースが中国っぽい?ですが、ちょっと可愛い感じに見えるのは当方だけでしょうか。 |
6石スーパーラジオキット カラフルなケースが特徴の6石スーパーラジオキット。5つのカラーバリエーションがあります。 |
7石スーパーラジオキット 7石とありますが、一つは検波ダイオード代わりに使ってますので実質6石です。だからそーゆーのはやめなさいってw |
8石スーパーラジオキット 初心者でも簡単と書いてありますが、品質や部品にクセのある一品。ちゃんと鳴らすには付加作業がいるかもです。 |
8石スーパーラジオキット 単一ですが電池一つ1.5Vで鳴るスーパーラジオキット。8石とありますが、一つはダイオード代わりで実質7石なので注意。 |
6石スーパーラジオキット 貴重な日本製6石ボード式ラジオキット。よく知られるデッドストック品です。パターンがなく部品の足で配線するのが少々面倒。 |
余談ですが、以前に子供の頃に憧れていたラジオキットの一つ、科学教材社の6石スーパーラジオキット「CHERRY CK-606」をたまたま見つけて即買いしたことがあります。
初歩のラジオ(1948年7月創刊~1992年5月休刊)に載っていた科学教材社のラジオキットカタログです。
初歩のラジオ 1980年9月号 第三十五巻
そのカタログの中にいつもあった「CHERRY CK-606」を組み立ててみた。
作ってみると、AGCは付いているもののゲインが高すぎて放送を受けるとピーキー鳴ります。トランス式のSEPP回路では負帰還が全くかかっておらず、ゲイン高いし音が悪いしホワイトノイズも多い。ボリュームがガリオームだし、ケースなど機構の品質もイマイチという有様・・・
あれだけ憧れていたキットがこんなものだったのかと幻滅してしまったんですが、忘れていた夢が叶った出来事で感慨深いものもありました。
ダウンロード・参考
製作に使用した全ファイルです。無断で二次配布することはご遠慮ください。ご紹介いただく場合は当記事へのリンクを張ってください。連絡は不要です。
9石スーパーラジオ
ラジオ実験セット
参考・書籍
参考になるWebや書籍です。当製作記事の内容と合わせれば、自分で高性能なスーパーラジオを設計できるようになると思います。