ブックシェルフより更に小さい、デスクトップ向けのこだわりスピーカーを作りました。
大型スピーカーが廃れてしまい、ブックシェルフ型でも大きく感じる現代でも、デスクトップでPCからのオーディオをスピーカーで再生する機会は、まだまだあると思います。
今ではPCスピーカーも、それなりに聴ける品がそこらじゅうにありふれていますが、共通しているのが、低価格路線、薄っぺらいプラスチック製のエンクロージャー、汎用DACに汎用アンプ搭載のアクティブスピーカーといったところでしょうか。
超小型ながら木製キャビネットで音質を重視したもの、昔のD-77時代「598戦争」の頃にあったような見た目カッコいいもの、こだわりを感じるものが少ないように思います。
それで自作することにしたんですが、今更ありきたりなフルレンジ1Wayではヤル気が出ないので、ちゃんとした2Wayで構成し、パッシブラジエーター方式としてみました。
超小型サイズながら、ツイーター&ミッドバスの2Way構成。
パッシブラジエーター採用で、すっきりとした重低音が響きます。
手間はかかりましたが、これでも一本1万円もかかっていないと思います。
デスクトップ向けとして片手で持てるサイズ感としました。
大型マグネットと、空芯コイルが2つ入っているので、このサイズにしては結構重たいです。
内寸は76×86×136mmで、容積は約0.9L。
エンクロージャー材質は7mm厚のMDFです。
普通に撮った写真では分かりませんが、表面はつや消しニス塗装となっていて、固く冷たくツルツルした感触のつや消しです。
ツイーターの周波数特性が、仕様上は25kHzまでなので完全ハイレゾとまではいきませんが、それでも標準的なツイーター(20kHz)よりかは伸びのある高音を再生できるハズ。
もう少し大きくすれば、FOSTEXのPT20Kや、ハイレゾのFT28Dが付けられますね。
その他、スピーカーを自作するのに必要な知識や、自作ノウハウの一例をご紹介します。
スピーカー自作の基本知識
スピーカーユニットは、基本的に裸の状態では音を発しません。コーン(振動板)の前と後ろの空気が回り込んで、お互いに打ち消し合うためです。
ただ、音速(340m/s)の壁により、周波数が高いほど位相のズレが発生するので、ユニットを裸の状態で鳴らすと、そのズレた分が音として聴こえます。
そこで、コーンの前後を分離するために箱に取り付けるわけですが、この箱のことを「エンクロージャー」と言い、製品だと「キャビネット」と呼ばれることも多いです。
また、スピーカーを取り付けてある前面の板の事を「バッフル板」と呼びます。
箱に入れたら入れたで、今度は色々な鳴らし方、エンクロージャー方式が生まれました。
エンクロージャー方式
エンクロージャの方式とは、大まかに言ってしまえば、低音をいかにどれだけ出すのか、という事だと考えて差し支えないと思います。
自作するなら、エンクロージャー方式を決める必要があります。
色々あるのですが、次の4つは自作で良く採用されるエンクロージャー方式です。
完全な箱に取り付ける方法で、最も基本的で作るのも簡単です。
密閉されているので空気がバネになり、コーンが動きにくくなるため、箱が小さいほど低音が出にくくなります。なので、小型スピーカーで使われることはあまりなく、大型スピーカーでよく見られます。
音質的には、締まりのいい音と良く言われます。
自作では時々見かける感じですね。
作るのが簡単なので、低音はあまり関係ね~というなら十分選択肢に入ります。
箱に筒を取り付けると、ヘルムホルツ共鳴によって特定の周波数が増強して聴こえます。バスレフ型は、これを応用したエンクロージャー方式で、最も一般的な方式です。
スピーカーでは、この筒のことを「ダクト」と呼びます。
また、ダクトを2つ設けたものは「ダブルバスレフ」と言われます。
ただ、この共鳴周波数がポイントで、少しくらいならテキトーでもいいんですが、ズレすぎているとイマイチになってしまうので注意が必要です。
・周波数が高すぎる → 中音域が増して息苦しい音になる。
・周波数が低すぎる → 大して低音が出ない。
箱の容量とダクトの長さが計算できるサイトが多くあるので、それらを参考にします。
>バスレフ型スピーカー ダクト共振周波数の計算 DIY-Sound
他に、コーンの後ろから出た中高音もダクトから出てくるため、本来の音を濁してしまうという事も指摘されていますが、これは吸音材をうまく使うことで改善します。
自作でも多くがバスレフ型だと思います。初心ならバスレフ型をオススメします。
バスレフ型はもちろん、ダブルバスレフ型もキットで手に入ります。
ホーン型の応用です。ホーンは、段々と広がる筒を通して発音能率を高めます。吹奏楽器や拡声器もホーン型の一種ですね。
それを、スピーカーの後ろに持ってきて、長いロードホーンを通すことで低音増強を狙うのがバックロードホーンです。
狙う周波数が低いほど、長いロードが必要です。
設計や製作の難易度が少し高いのですが、低音増強にロマンを感じるためか、自作でも結構よく見られます。キットでも結構あるので利用できます。
昔はドロンコーンとか呼ばれて間抜けな感じでしたが、パッシブラジエーターの事です。これはバスレフ型の応用であり、ダクトとその中の空気を、質量を持ったコーンに置き換えたようなもので、ダクトがない分だけ小型化できるのが特徴です。
コーンにオモリが付いていて、共振周波数が調整できるのもあります。
また、バスレフ型のように、中の中高音が出てきて音を濁すということもありません。
パッシブラジエーターは、Bluetoothスピーカーやサウンドバーなどでもよく使われていて、最近では自作パーツとしても入手しやすくなってきました。
今の所、自作ではメジャーではないようですが、今後増えてくるかもしれません。
パッシブラジエーターは、バスレフ型と同じで、共振周波数に注意する必要があります。多少のズレなら大丈夫ですが、大きくズレると期待外れとなります。
それともう一つ気をつける事があります。それは、パッシブラジエーターは、使うウーファーの少なくとも2倍の変位量(Vd)を持っている必要があるという点です。
これを満たしていないと、十分な効果を発揮できません。
Vd は仕様に記載されていないと分からないので、ウーファー、パッシブラジエーター共に、きちんと仕様が出ているものを見つける必要がありますね。
ダクト・パッシブラジエーターの位置について
バスレフ型やドロンコーン型では、ダクトやパッシブラジエータから出てくる共振音(位相が反転している)を、正面から出てくる音と合成することで、低音を増強します。
基本的に、その位置はどこでも良いのですが、前面にあるとリスナーが直接音波を受けるため、より効果が感じられることになります。
しかし、これはエンクロージャーのサイズやデザインに大きく影響するため、大きな悩みどころになりますね。
ダクトが背面にあると、低音の聴こえは減りますが、コーン背面からの余計な中高音も聴こえにくくなるため、そういう意味では利点になります。昔ですが、それをセールスポイントの一つにしていた製品も見たことがあります。
なお、ダクトが前面にあるのはフロントダクト、背面にあるのはリアダクトとも呼ばれます。上面や側面にある製品もあります。
スピーカーユニット
1kHzくらいから下の低音が得意なユニットです。大型スピーカーで使われます。
自作でも、低音追求マニアに人気です。車載でもよく登場しますね。
5kHzくらいまでの中低音が得意なユニットです。ブックシェルフで良く見かけます。
自作でもよく使われるレンジです。
中音が得意なユニットです。大型や3Wayで使われます。
最近では3Wayのスピーカー自体あまりなく、自作でもほとんど見かけません。そういう時代ですから、新品のスコーカーユニット自体が入手困難です。
現代で使うなら、フルレンジやミッドバスなどで代用することになります。
数kHzくらいから上の高音が得意なユニットです。
もっと高い周波数になると、スーパーツイーターとも呼ばれます。
中域も再生できるものは、ミドルレンジツイーターとも呼ばれます。
単体でどの音域も再生でき、入手性も良いです。
中低音を担当させる場合は、ミッドバスと呼ぶ事もあります。
言うまでもなく、自作でも一般的に使われています。
スピーカーネットワーク
ユニットを複数使う場合は、スピーカーネットワークが必要になります。
スピーカーネットワークとは、言い換えるとフィルタです。ツイーターにはハイパスフィルタを、ミッドバスにはローパスフィルタを付ける、という話ですね。
また、フィルタだけでなく、ツイーターとミッドバスの能率やインピーダンスが異なる場合に、それを同じにするためのアッテネータも追加します。
部品定数の計算が必要ですが、LTSpiceなどのシミュレータでも確認できます。
フィルタ
面倒だからって、ツイーターとミッドバスを直に並列につないで使ってはいけません。
並列にして合成される音の周波数特性はフラットではなく、合成インピーダンスも半分になってしまいます。さらに、ツイーターに低周波を流すと壊れてしまいます。
HPFとLPFできちんと高音と低音を分けて、それぞれツイーターとミッドバスに接続すると、アンプ側から見たインピーダンスは変わりません。つまり、8Ωのツイーターと8Ωのミッドバスは、スピーカーネットワークを通して接続すると、8Ωのままなんです。
どこの周波数で分けるかというのが「クロスオーバー周波数」と呼ばれ、使用するユニットに合わせて決めます。ミッドバスとツイーターでは、一般に数kHz~10kHz程度。
ツイーターを壊さないためには、最低でもツイーターの最低共振周波数(F0)の1オクターブ以上の周波数は欲しいところです。
フィルタにはカットオフ周波数というものがありますが、クロスオーバー周波数とカットオフ周波数は違います。
ツイーターとミッドバスのカットオフ周波数を同じにして合成すると、クロスオーバー周波数(交差する周波数)では、若干盛り上がります。なので、両者のカットオフ周波数を、数kHz程度離して設定する場合もあります。
一般的には、次の2つのタイプからどちらかを選びます。
コイルとコンデンサ1個ずつの回路です。
肩特性がなだらかなので、高音側と低音側の混ざり合う部分が多くなり、音のつながりが自然になりますが、両ユニットで美味しく聴ける周波数範囲が広くなければなりません。
部品が少なく製作が簡単なのもメリットです。両者の位相は90°ズレます。
メーカーのスピーカーでは、ミッドバス側のコイルを省いているケースがよく見られます。ユニットの特性とマッチしていて問題ないのか、スペックよりもコストダウンを重視しているのか、のどちらかですね。案外気づきにくいので、いい加減な製品も多いです。
コイルとコンデンサは次の式で求めます。
※ Fc:クロスオーバー周波数(Hz) R:ユニットのインピーダンス(Ω)
■-6dB/octタイプの肩特性グラフ
コイルとコンデンサ2個ずつの回路です。
両ユニットの周波数範囲を絞ってより専門化することで、それぞれのユニットの持ち味を活かすことができます。メーカー製の高級スピーカーではこれが一般的だそうです。
両者の位相は180°ズレるので、どちらかのユニットの極性を逆にして接続します。
この回路では、部品定数によって次の特性付けができます。
名称 | 特徴 |
---|---|
バターワース特性 | Q=0.7でおなじみの一般的な特性で、最も平坦な肩特性を持つ。 |
ベッセル特性 | なだらかだが、位相特性が良く通過前後で波形の変化が少ない。 |
コイルとコンデンサは次の式で求めます。
名称 | 特徴 |
---|---|
バターワース特性 | |
ベッセル特性 |
※ Fc:クロスオーバー周波数(Hz) R:ユニットのインピーダンス(Ω)
■-12dB/octタイプ バターワースの肩特性グラフ
■-12dB/octタイプ ベッセルの肩特性グラフ
この記事の自作例では、ベッセル特性を採用しています。
他にも色々ありますが、自作ではほとんど使われないので省略します。
詳しくは、次の資料が参考になります。
>パッシブネットワークの作り方
アッテネータ
ツイーターとミッドバスの能率が異なる場合や、両者のインピーダンスが異なる場合に挿入して、各特性を同じにします。それらが同程度なら不要です。
能率は、ユニットの仕様に「90dB@1W/1m」とか「86dB@2.83V/1m」などと、dB単位で記述されています。(1W/1m と 2.83V/1m は同じ意味)
基本的に抵抗2本で作りますが、インピーダンスを変更するだけの場合は、1本で済む場合もあります。例えば8Ωのユニットに8Ωの抵抗を並列につなぐと4Ωにできますね。
上の回路は、ツイーターの-6dB/octフィルタに、アッテネータを追加した例です(普通はツイーターの方が能率が高い)。必ず後ろに追加します。
また、抵抗に必要なおおよそのワット数を、スピーカーの許容電力、もしくは実際に使用を想定する最大電力から求めます。
抵抗値は、計算できるサイトが多くあるので参考にします。
>パッシブネットワーク計算(アッテネーター)
スピーカーネットワークのパーツ
コイル
コイルは、空芯コイルと、フェライトなどの磁性体コイルのどちらかが使われます。
・空芯コイル:サイズが大きい代わりに、歪が少なくて高音質
・磁性体コイル:歪が大きいが、サイズが小さい
空芯コイルが使われるのは、高級スピーカーや、高級志向な自作マニアに限られます。
一般的な価格帯の市販スピーカーで使われていることは、あまりありません。
Solen 空芯コイル 0.22mH OFC単線(18AWG)の空芯コイル2個セット。インダクタンスのラインナップも多くあって良いです。サイズに注意。 |
小電力用のスピーカーコイルは、入手性が良くないのが悩みどころです。
売られている多くは何十ワット対応という、デカい空芯コイルなんですが、小型スピーカーを作りたい場合には、エンクロージャー容積が減るのでむやみに使えません。
コンデンサ
スピーカーでは、ユニットのインピーダンスが低いがゆえにESR(内部抵抗)の影響を受けやすいため、極力ESRの低いコンデンサを使うようにします。ESRが大きいと、その損失により音量が下がったり、周波数特性にも悪影響を及ぼします。
普通は、ESRや歪み率でも有利なフィルムコンデンサが使われますが、一応電解コンデンサでも大丈夫です。電解コンデンサの場合は、無極性タイプがオススメですね。
間違っても、圧電効果のあるセラミックコンデンサは使わない方が良いです。
スピーカー用のコンデンサとして、よく大きな円筒形のフィルムコンデンサが売られていますが、そういったものでなくとも、普通のフィルムコンデンサで大丈夫です。
ただ、コンデンサは一般にサイズが大きいほどESRが低いので、大きなものほど有利になりますが、小型エンクロージャーでは内容積を圧迫するので注意が必要です。
Solenフィルムコンデンサー スピーカーネットワーク用とされるフィルムコンデンサ。耐圧630Vですが、多くの場合オーバースペックです。 |
求めるコンデンサの容量に一致する品がない場合は、いくつか組み合わせて近い容量にします。完璧に一致しないとダメということはなくて、少しくらい違っていても問題ありません。人間の耳はそのくらいいい加減です。
既成のスピーカーネットワーク
よくAmazonなどで、中華のスピーカーネットワーク基板が売られていますが、多くはカットオフ周波数が不明なので要注意です。また、アッテネータも不明な抵抗が付いていたりいなかったりするので、そこも確認が必要ですね。
スピーカーネットワーク パッと見た目は良さげなスピーカーネットワーク基板。1つは空芯コイル使用です。クロスオーバー周波数は分かりません。 |
もし、ちゃんと使えそうなら便利なので、こういった基板を探すのも良いかと思います。
部品のローコスト化
コイルにしろコンデンサにしろ、良いものは、大きかったり高価だったりします。
そこで、スピーカーに直接信号を流す部品だけに高級品を使い、そうでない部品には安物を使えば良い、という考え方があります。
私はこの考え方に否定的なんですが、次のようなイメージです。
これを参考にして部品選定するのも良いかと思います。実際、メーカー製の製品でも、空芯コイルと磁性体コイルの両方を使い分けている例は良くあります。
ただ、私的には納得していません。流れるものが水ならその通りかもしれませんが、回路で扱うのは電気の波です。スピーカーに届く電力は、全パーツの合成インピーダンスの結果なので、影響しないパーツなんてあるはずがないと考えています。
例えば、ツイーターのコイルで歪が発生すると、コンデンサとの分圧がスピーカーに掛かる電圧なんですから、出力に影響しないはずがありません。
また、ミッドバスのコンデンサに、周波数特性が極悪のコンデンサを使ったとすると、フィルタが想定通りの特性を示さなくなる可能性があります。
しかし、どちらかに必ず安物を使えと言われれば、図の通りにします。
エンクロージャー
エンクロージャーは木材で作るのが一般的です。
板が薄いと、箱が響いて音を濁す「箱鳴り」が発生するので、なるべく厚い板が良いのですが、これもサイズや重量、価格などとのトレードオフになりますね。
必要に応じて、内部に補強板や補強枠を接着することもよくあります。
補強材は、売られている角材や、エンクロージャー加工時に出た端材を利用します。
材質
定番中の定番でオススメなのがMDF板です。安くて加工しやすく、重厚で音響的にも良いとされています。ただし、MDFにも欠点はあります。
1つ目は、湿度に弱いため、加工作業中も含めて水分はNGです。
塗装も、水っぽい塗料は直接は使えないので、シーラーで目止めする必要があります。
2つ目は、粒を固めたようなものなので、局所的にはもろいという点です。
例えば、木ネジを使う場合、下穴を開けないと、ネジ込んだ部分が粉々になってしまって強度が下がるので注意が必要です。
スライスウッドMDF板 A4サイズのMDFボードです。ブックシェルフくらいのサイズまでならA4サイズで作れます。厚さが色々選べます。 |
もちろん他の材質でも作れますが、音質を気にするなら強度や密度、損失(響き)などに注意する必要があります。例えば、薄いプラ板やアクリル板などは、ビリツキや、妙な共振音が加わったりするのでオススメしません。
ダクト
自作のバスレフ型のダクトの定番は、ホームセンターにある塩ビパイプですね。
径の違う2つの塩ビパイプを使って、長さを調整できるようにした作例もあります。長さを調整することで、共振周波数を調整することができます。
しかし最近では、エンクロージャー下部に四角い開口部を設けたスタイルのダクトが人気のようです。設計が多少面倒になりますが、パイプ不要ですしオススメです。
吸音材
コーン裏側から発する音を弱めたり、箱内で発生する定在波を弱めて、音のホワホワ感を無くします。特に、バスレフ型の場合はこだわっても良いかと思います。
ただ、入れ過ぎると、中高音の出が悪くなってアンバランスな音になったり、低音まで減衰してしまうので、多ければ良いというものではありません。
調整するなら、なるべく少ない量で、バランスの良いポイントを見つけるのがコツです。
音工房Z 吸音材 スピーカーボックス内部の使用に適した吸音材です。特に高域に優れた吸音特性があります。サイズが選べます。 |
よく使われるのがフェルトです。¥100ショップにもありますが、厚さが薄すぎる気もします。密度が高いので、逆に厚すぎるとエンクロージャーの容積が減ってしまいます。
この記事の自作例で使っているのは、手芸で使われるキルト芯です。安くて、程よい密度があって、平らになっているのでスピーカの吸音材にピッタリ。
似たようなものに換気扇のフィルターがありますが、これは密度が低くて吸音性が悪いのでイマイチだと思います。
スピーカー端子・ケーブル
今では、スピーカー端子も、中国製がほとんどですが色々売られていますね。
ケーブルは、なるべく太く、理想的には無酸素銅(OFC)が良いとされます。
ただ、スピーカー内の限られた距離で、ケーブルを極太のOFCケーブルにしたところで、そんなに音が変わって聴こえるわけでもないです。
数ミリΩくらいは変わるかもしれませんが、それが分かる人間っているのでしょうか。
それでも自己満足として、モノ作りとして楽しむ、というのであれば全然良いと思いますが、期待しすぎてソコに高価な出費をするくらいなら、別の部分に投資できないか考えてみるのも良いのではないかと思います。
低音の出し方
入門レベルという方のために、一応簡単に説明しておきます。
スピーカーの低音は重要な関心事ですが、出れば良いというものでもないです。
出すぎている状態というのを聴いた事があるなら分かると思いますが、いわゆるブーミーだったり、中音が押されてしまって聴こえにくくなるとか、不快感が出てきます。
バスレフ型やパッシブラジエーターの場合、できれば正しい設計ができるのが理想ですが、できあがってしまったものは調整でなんとかするしかありません。
まずは、吸音材です。吸音材を多く入れると低音も減衰します。また、ダクトに軽く詰め物をすることでも調整できます。
調整機構が付いているパッシブラジエーターの場合は、コーンの重さで周波数を調整できます。重たいほど共振周波数が下がると同時に、体感音圧も下がってきます。
そもそも、スピーカーをどこに設置するか(壁や床に近いか)でも大きく変わります。
スピーカーの自作例
今回はデスクトップ向けとして、次の要件で製作しました。
小型だと低音が少なくなってしまいますが、そんなことよりサイズが最優先。サイズが大きいなら、低音が出るスピーカーだとしても要らない!という条件です。
そして、自作スピーカーにありがちな角張った無塗装エンクロージャーとかも却下です。
今時の自作スピーカーといえば、多くの場合フルレンジユニット1個のスピーカーです。昔と違って、フルレンジユニットの高域特性が良いからというのも理由の一つです。
また、ユニットが1個なら定位が良いというメリットがあるし、スピーカーネットワークも要らないので、2Wayに比べると圧倒的に作りやすくなります。
しかし、今更そんなフルレンジ1Wayのスピーカーなんて、ありがちすぎてどうもヤル気が出ません。子供の頃にも何度か作った事あるし。。
そういうわけで、超小型2Wayスピーカーに決定です。そして、一度は使ってみたかったパッシブラジエーターを採用。スピーカーネットワークは-12dB/octタイプとし、全て空芯コイルを使うという、高級スピーカーなみにこだわります。
スピーカーユニットは、見た目やサイズで選んでいたら、Dayton Audio 一択となりました。小型シリーズで高級路線ではないですが、いい音を聴かせてくれます。
回路図
スピーカーネットワークの回路です。
クロスオーバー周波数は5kHz、ミッドバスとツイーターのカットオフ周波数も、両者とも同じ5kHzとしています。
負荷4Ω、カットオフ周波数5kHzのベッセル特性でコンデンサとコイルの定数を計算すると、C:4.56uF、L:0.22mH となります。1.5uFのコンデンサを3つ並列接続することで 4.5uF が作れるので、ほぼ理想に近い容量になりました。
ツイーター側に挿入したアッテネータは、ミッドバス側の出力レベルと合わせるために-4dBするだけでなく、使用したユニット(ND20FA-6)が6Ωなので、インピーダンスを4Ωに下げるようにもなっています。つまり、-4dBするのと、6Ω→4Ωにするアッテネータを合成した定数となっています。
下図は、LTSpiceでのシュミレーション結果です。
青:ミッドバス 赤:ツイーター 緑:合成出力
※合成出力を「赤-青」としているのは位相が逆のため
クロスオーバー付近がわずかに盛り上がっています。
バターワース特性だと、これよりもっと盛り上がるので、ミッドバスとツイーターで、カットオフ周波数を数kHz程度離して設計することもあります。
本作では、使用するミッドバス(PC68-4)側の周波数特性を見ると、中高音域にかけてやや低め右肩下がりとなっており、逆にこの盛り上がりによって補完される形になるため、実際にはちょうど良い形になるのではないかと考えています。なので、ミッドバスもツイーターも同じカットオフ周波数のままとしています。
というか、そもそもベッセルなので、そんなに気にしなくてもいいですね。
また、カットオフ周波数が同じだと、部品定数が共通化できるという利点もあります。
パーツと入手先
今回は電子パーツだけではないので、色々探し回りました。
スピーカー専門店もありますが、基本的に値段が高めなので避けました。
ND20FA-6(Amazon)
1.9cmツイーターです。
6Ω, 3.5kHz~25kHz, 90dB@ 1W/1m
見た目も良く、低価格なのもいいですね。
PC68-4(Amazon)
6.8cmフルレンジです。少し高域が弱い。
4Ω, 120Hz~17kHz, 86.1dB@ 1W/1m
見た目に惚れました。これも低価格。
DMA70-PR(Amazon)
7cmパッシブラジエータです。
FS:34.5Hz, Vd:16.0cm³
後ろのオモリ(ワッシャ)の数で質量調整ができます。
0.22mH空芯コイル(ヤフオク)
米erse社の空芯コイルとのこと。
線径は0.8mm。後述しますが、実測では0.27mHが0.22mHでした。
出品者は、個人ではなく業者さんのようです。
フィルムコンデンサ(秋月電子)
メタライズドポリエステルフィルムコンデンサ 1.5uF 100Vです。
(MEM155J101RB-5)
金属皮膜抵抗(マルツ)
KOAの小形金属皮膜抵抗 2W です。1.5Ωと4.3Ωを使いました。
(MOSX2C4R3J)
(MOSX2C1R5J)
MDFボード A4(210×297㎜) 7.0㎜厚(Amazon)
ニュージーランド原産で、国内製造のMDF板。
ソリもほとんどなく、品質がとても良いのでオススメです。
¥100ショップのはソリがあったりするので要注意ですね。
スピーカー端子 WV-LPT2-2(Amazon)
小型(57mm*57mm)のスピーカ端子です。
ここまで小さいのはあまりないので貴重です。
小型スピーカーにピッタリ。
キルト芯(Amazon)
手芸などで使われるアイテムです。程よい密度があって、平らになっているので吸音材にピッタリです。
本作のスピーカーユニット
材質は、ポリダンピンググラスファイバーコーンとのことです。
本当は8Ωが欲しかったんですが、どこでも在庫切れで入手不可でした。
ネオジムマグネットなので小型でシンプルなドームツイーター。
ハイレゾとまではいきませんが、再生域は25kHzまであります。
パッシブラジエーターの選定について
最近では、Amazonでもいくつかパッシブラジエーターが売られていますが、ほとんどどれも仕様が書かれていません。適当に使ってみるしかないという感じですね。
今回採用のパッシブラジエーター(DMA70-PR)は、細かい仕様が公開されています。
データシート
DMA70シリーズのフルレンジユニットに合うような仕様となっているんですが、もちろん、それ以外のユニットでも使えます。
DMA70-PR の Vd は 16.0cm³ で、ミッドバス(PC68-4)の Vd は 4.2cm³ なので、先に説明した変位量2倍の条件はクリアしていますね。
コイルのインダクタンスについて
今回使った、ヤフオクの業者から入手したコイルのインダクタンスについてです。
先に注文したもので実測したところ、なぜかどれも容量が小さく測定されました。例えば、0.15mHの品は、0.12mHと測定されます。
そこで、別に実験用の測定回路を作り、いろいろな周波数で試してみましたが、やはりどう考えても測定値が正しいという結論になりました。
同じスペック同士のコイルは、小さいながらもほぼ同じ値を示すので、誤差ではなく商品の表示にズレがあると思われます。なぜだかわかりませんが、これが激安の理由?
なので、今回の0.22mHについては、それを見込んで0.27mHを購入したところ、思惑通り0.22mHのものを手に入れることができました。
コイルのインダクタンスを確認しています。出品者情報では0.27mHですが、実測では0.22mHとなっています。
出品者と色々掛け合うのも面倒なので、これにて一件落着としました。
LCRメーター LCR40 C:0.4pF-10000uF(±1.5%) L:1uH-10H(±1.5%) 但し、小さい値では精度は落ちます。 |
出処のはっきりしないスピーカー用コイルは、実測して確認した方が良さそうです。
製作手順
①スピーカーネットワークを作る
②エンクロージャーを作る
③エンクロージャーの塗装
④最終組み立て
⑤試聴
①スピーカーネットワークを作る
基板はPCBWayで発注しました。
より詳しく⇒プリント基板の自作!簡単にできる格安オーダーメイド法
オーダー時に入稿したガーバーファイルを公開します。
被覆はしばらく熱を加えると焼けて取れます。
ツールクリッパー TX303 パーツショップでよく見かけるTSKのツールクリッパー。電子工作では基板の固定やハンダ付けの時にとても重宝します。 |
部品の定数確認や、シミュレーターでも確認しているので厳密な周波数特性までは見ません。
聞いた感じで、それなりに高音・低音がカットされているのでOK。
②エンクロージャーを作る
加工図です。描画ソフトは、名も無いフリーの基板CADなんですが、使い慣れているのでいつもなんとなく使っています。(ファイルを一応ダウンロードに置いています)
※この図はラフスケッチなので、補強材など一部省いたり適当な部分があります。
これを、テーブルソーを使って切り出します。
テーブルソーを使う場合、各サイズを都度調整して切り出すのではなく、同じ長さの辺は一度に全部切るようにします。そうすれば、多少の誤差が出たとしても、みな同じ誤差で組み立てる事になるため、接合部の段差が出なくなり精度良く仕上がります。
それを実現するために、各面の割当てやカット順を計画するのですが、大抵は元板の使用率が下がってしまって無駄な端材が出てきます。でもここでは精度優先とします。
節約すれば、元板が3枚で済むはずですが、4枚使う事になりました。
もちろん、普通のノコギリを使っても作れます。ただ、どうしてもある程度の誤差が出て、接合部の段差の原因になるのですが、後述のサンディングシーラーとハンドサンダーを使えば、きれいな面一を出すことができます。
ただ、場所によっては、誤差が0.5mmくらいより大きくなると、段差ではなく組み合わせた時の隙間になり、パテ埋めが必要になったりするので注意が必要です。
今回使う7mm厚のMDFボード。A4サイズなので扱いやすいです。
緩衝材まで入っていて品質は良いです。
まずは、大きい丸穴を開けます。小型スピーカーということで、板の切り出しサイズが小さいため、最初に小分けにしてしまうと穴あけ作業ができなくなります。大きいスピーカーなら後からでも大丈夫ですね。
自在錐で穴のサイズを調整します。
スターエム 自在錐 36X 穴あけにオススメの自在錐(じざいすい)。ホールソーという手もありますが、必要な回転トルクが大きく仕上がり精度も悪いです。 |
¥100ショップで売っている端材などを利用して、試し穴を開けます。これをやると、かなり正確な穴あけができます。
一応、目盛りも付いているんですが、1mm以内の誤差に納めるにはこのようなお試しが必要。
この時、途中まで開けたら、後は裏側から開けるようにします。そうしないと、貫通した時に裏側の縁が割れたりバリで汚くなります。
MDF板では特にコレ重要!
ドライバードリル CDD-1030 回転数を低速と高速に切り替えられるのが良いキーレスドライバードリル。穴あけ時は高速でないとバリが出やすいです。 |
板の切り出しです。
7mm厚だと、小型のテーブルソーでも超快適。
ミニカッティングテーブルソー 基板のカットが楽チンになる!木材やケースの加工にも使えるミニテーブルソー。この値段で品質もよくオススメ。 |
本作では、バッフル板の両側にRを付けるために、半円棒を加工して1/4の丸棒を作ります。
元々はΦ20mmの半円棒ですが、縦横ともに7mmになるようにサイドもカットしました。
なお、エンクロージャー内側の角部に添える補強材は、15mmの三角棒を使いました。
これ、キットにでもして売りますかね。
と思うくらい満足のデキでした。
接着力の強いエポキシ接着剤を使って、バッフル板のサイドにコーナーを接着します。
本当はタイトボンドを使う予定だったのですが、直前に買い忘れに気づきました。
セメダイン エクセルエポ 木材にも使えるエポキシ接着剤。10分ほどで固着が始まります。湿気にも強くとても強力に接着できます。多少ベタつきがあります。 |
クランプ HQB-100-2P 木材の固定などでとても便利なクランプ。 クイックイッと握るだけで挟んで固定し、ボタンを押すとリリースします。 |
微妙な段差などは、後のサンドペーパーがけで落とします。
次に、ネジの下穴を開けます。
MDF板では、木ネジの下穴はほぼ必須です。
これは、スピーカーネットワーク基板を取り付ける木ネジの下穴です。深さが5mmとなるようにマスキングテープの目印を頼りに開けます。
(M3のビスに対してΦ2mmの穴)
こちらは内側にネジが突き出てもいいので貫通させました。
ココは現物合わせの方が早いようです。
スピーカーは、このようにM4ビスで貫通させて裏側からフランジナットで固定します。
MDF板で細いドリルを貫通させると、裏側でバリが出たり割れたりするので、必ず裏側からも開けてドリルを貫通させるようにします。
そのために、ピンバイスを使って裏側にも小穴を通します。
ピンバイス No.98-R 2個の両頭チャックを本体に収納していて、4種類のチャックが選べます。ラバーグリップが滑らず使いやすい。 |
失敗するとこうなります。
慌てて割れを修正しようとしています。まあ、これくらいなら問題なし。
エンクロージャー内側の角部に添える補強材を接着しておきます。
先に貼り付けておく方が、後で組み合わせる時の作業がしやすいです。
それにしても、タイトボンド使いたかったですね。まあ、コニシでも問題ないのですが。。
タイトボンド 木工で定番、木材の接着が強力で有名なボンドです。コニシと違ってサンドペーパーで削れるほど固くなるのでオススメです。 |
このように、面一になる側の板に貼り付けておくと、指で触って段差を無くしておけるので精度も出しやすいですね。
小型なので、スピーカー固定用のナットは先に付けておくことにしました。スピーカーを仮止めした状態で接着します。
先のエポキシ接着剤を使いました。
スピーカーネットワーク基板は、3mmのスペーサを置いて木ネジで固定。
なお、このサイズでは、組み立てるとスピーカーネットワーク基板はいじれません。
壊したりでもしたら大変ですな。
黒いのは、ダイソーで売っていた多目的ゴムバンドです。
挟むと余分なボンドがウニャウニャと出てくるのが気持ち悪いです。
テーブルソーの使用と、カット順のプランニングにより、接合部の段差はほとんど無し!
のこぎりでギコギコと切った場合はこうはいきませんが、後でサンドペーパーで平らにできるので大丈夫です。
サンドペーパーで接合部を平らにします。
#240を使いました。
きれいに効率よく平面を出すには、このようなサンドペーパーホルダーは必須です。
ザクザク削れますが、削り過ぎに要注意。
ハンドサンダー SK11 木製のグリップがしっかりと手に馴染み、とても使いやすいです。きれいな平面を出すことができます。 |
完全にツルツルきれいになりました。接合部を手で触っても段差はわかりません。
角ばっているエンクロージャーは嫌いなので、この後全てのコーナーを削り、丸みを付けて仕上げました。
③エンクロージャーの塗装
※注:白色つや消しでの塗装を前提にしています。(春先、気温25℃)
塗装方法としては、スプレー系かハケ塗りかのどちらかという所ですが、今回は塗膜の厚みと強靭性が欲しかったというのと、スプレーができる環境が整っていなかったこともあって、ハケ塗りだけでやってみました。
ハケ塗りでは、ハケ跡が残るのが課題になりますが、塗料を厚塗りしてサンドペーパーでハケ跡を取り除く方法で仕上げます。
ただ、このやり方は結構手間がかかるので、もっと楽にやるならサンディングシーラーの下地にラッカースプレーで着色して、最後にニスで仕上げるのがオススメです。
MDF板は吸湿性が高いため、一般に塗装が難しいとされているようです。確かに、ステインなどの水分の多い塗料だと吸い込まれてしまって、なかなか色が定着しません。
今回使った着色塗料は、アサヒペンの水性多用途EXという製品で、典型的なペンキと言っても良い塗料なんですが、粘度が高いため直接塗っても重ね塗りすれば大丈夫です。
そして、美しく仕上げるには、次の点がかなり重要です。
- 使う塗料の種類
- 各種塗料の塗り順
- 重ね塗りの回数
- 乾燥時間
- サンドペーパーの番手(目の粗さ)
どれもおろそかにしてはいけません。乾燥時間とか待つのも面倒ですが、がまんして確実にこなすのが重要です。(冬期は2~3倍の時間が必要)
本作での塗装工程は次の通りです。
ペイントの塗りムラやハケ跡を取るという意味では、⑤の工程が特に重要です。
ペイントの重ね塗りでは、説明書きには2時間(冬期は6時間)とありますが、厚塗りするので最低その2倍の時間は乾燥させた方が良いと思います。そうしないと塗り重ねるたびに乾燥しにくくなり、サンディングの仕上がりが悪くなる恐れがあります。
ちなみに、2時間と4時間とでは、乾燥後の塗膜の硬さが違います。なので、なるべく時間をかけた方が良いことがわかります。
次の三種類が、今回使った塗料です。
アサヒペン 水性多用途EX ポピュラーな、アサヒペンの水性多用途塗料 0.7L 白 です。粘度の高いドロドロの、まさしくペンキといった感じです。 |
水性サンデングシーラー 主に水性ニスの下塗り用として、平面を出すために使用するもので、研磨剤入りです。役割としては、との粉に近いかもしれません。 |
水性ウレタンニス 水性ウレタンニスのつや消しクリヤーです。硬い塗膜を作れるので、耐久性の高い塗装に仕上げることができます。 |
ハケは、上等なハケを使う方がハケ跡が少ないです。できれば、高価な上等品を使う方が良いのですが、今回は下のお得品でやりました。
ペイント刷毛 OT-3P アサヒペンの、お得な多用途用ハケ3本セットです。人気商品のようです。 ただ、一度の作業で3本とも使うということはあまりないですね。 |
ちなみに¥100ショップのハケは、毛が抜けやすかったりするようなので、避けた方が無難かもしれません。
ハケは、一方向上でゆっくりと動かし、一度折り返すのが基本です。
早く動かすと、塗料の供給が間に合わないため、後半あたりから急に薄くなってきます。すると、結局何度も塗り直しが必要になり、塗りムラや泡立ちの原因になります。
4度目のペイント塗装、乾燥が終わって、これからサンディングシーラーを塗るところです。
ハケ跡や塗りムラがあります。
サンディングシーラーに含まれる研磨剤の効果も相まって、ザックザック削れてハケ跡も消えました。
細かい粉が舞うのでマスク推奨。
最後の仕上げです。
つや消しのウレタンニスを塗っていきます。
見た目やニオイはサンディングシーラーとほとんど同じ。とても扱いやすい塗料です。
最後⑪の工程で#400で粗削りしたところ。
ここから、#1000→#1500を使って仕上げていきます。
ニスの場合、番手が細かいと目詰まりも早いので、サンドペーパーは多めに用意します。
裏側(左)は適当に仕上げています。
さらに、柔らかい布で乾拭きする感じで磨くと、鏡面仕上げのようにツルツルになります。
固くてまっ平らな塗面は、つや消ししたピアノの表面のようです。触った感じは、冷たくしっとりしていて、とても木製とは思えません。
このウレタンニスは水性なのにスゴいです。
④最終組み立て
パッシブラジエーターの裏にある調整オモリですが、ケースが小型なので、とりあえず1つ外してみました。
後で聴き込んで調整します。
というか、スピーカーのコイルとマグネットの代わりにオモリを付けた製品です。
入れ方は、エンクロージャーの壁面を覆うようにするのが基本ですが、他にも色々あります。
エンクロージャーが大きい場合は、折りたたんで多重にすればいいですね。
入れ過ぎると低音も減衰するので要注意です。
ツイーターユニットを取り付けます。
今回のツイーターには取付け穴がありません。
エンクロージャーには、ツイーター本体とほぼ同じサイズの穴を開けてあるので軽くハマるのですが、少々ゆるいので木工用ボンドを塗って乾燥させ、シーラーとして使います。
補修以外で交換はしないので、平型端子は使いません。直接ハンダ付けします。
ツイーター本体は、力を入れて押し込むとシーリングの柔らかさがあって、いい具合に固定できます。万が一凹ませた時は交換するので、接着はしませんでした。
ついにミッドバスユニットの取り付けです。
こちらも平型端子は無視して直にハンダ付け。金メッキとかより直付け最強!?
ケーブルは、エンクロージャー壁面などに当たらないように注意します。
メーカー製のスピーカーでは、ケーブルをクッション材などで包んでいるのをよく見ますね。
ボルトは低頭六角ボルトを使いました。
ここのボルトはスピーカーの見た目を大きく左右しますが、見た目にこだわったボルトというのは、あまり売られてないんですよね。
⑤試聴
使った再生機器は、次の記事で制作したハイレゾUSBAudioアンプです。
より詳しく⇒USBAudio2.0 DACの自作!BD34301EKV搭載
当たり前かもしれませんが、安いPCスピーカなどとは格が違いますね。
中高音はキレイに出ています。ボーカルや人のトークも聴きやすくとても自然で、ツイーターとミッドバスの音のつながりやバランスに問題はないようです。
音像が中央にしっかり定位して臨場感も良いです。
ピアノの旋律なんかはとても美しく、ハッとさせられる瞬間があります。
ただ、音源ソースによっては高音が少し耳につく気がします。超高域の再現性は、さすがに高価な高級スピーカーほどではない感じですね。
低域は小型なりに出ていて、パッシブラジエーターが効いているのがわかります。音量を上げると、サイズからは想像できない重低音が響いてきます。
パッシブラジエーターは、イコライザーなどでバスブーストするのとは違い、エネルギーの供給量を増やすわけではないので、そこまでガンガンドンドンにはなりません。
しかし、小型のエンクロージャーながらも、自然で力強く、すっきりと低音を響かせてくれるような、そんな印象を受けます。
調整用のオモリは、最終的に3つあるオモリのうち2つを外した状態に決めました。
まだエージングが進んでいないので、今後の変化が楽しみです。
今回、7mmのMDF板を使ったわけですが、普段の音量ではキャビネットのビリツキどころか振動も全く感じません。小型スピーカーとしては十分な剛性ではないかと思います。
このサイズで部屋で小さく聴くのがメインなら、5mm厚でも良さそうです。
スピーカー自作キット
スピーカーのキットの多くは、スピーカーユニットだけは別になっている、つまり、エンクロージャーキットが主流です。
このように分かれているのは、製造元の都合もありますが、エンクロージャーとユニットが、必ずしもセットで気に入るとは限らないからです。それぞれを選べるようになっているのは、逆にありがたいことなんですね。
オールインワンもありますが、数少ないので気に入るものが見つけにくいと思います。
スピーカーユニットは、キット側で「**用」などと指定されている場合もありますが、6cm、8cm、10cm、といった具合に概ねサイズが決まっているので、気に入ったエンクロージャーキットを見つけたら、必要なスピーカーユニットを探すという流れになります。なので、必ずしも指定されたユニットだけしか使えないというわけでもないです。
スピーカーユニット自体は沢山ありすぎるので、ここではエンクロージャーキットを中心にご紹介します。
NFJ MODEL-PLS FX-AUDIOブランドで、スピーカーユニット以外の全てが揃っているキット。超小型なので価格も安く、初心者でも安心です。 |
音工房Z Z601(V2) 7cmユニット用のダブルバスレフ型エンクロージャーキット。ダブルバスレフの低音に期待できます。 |
マトリックススピーカーキット 音工房Zのちょっと変わりダネ、マトリックススピーカーキットです。置き場所に困らなければ体感したくなるボリュームです。 |
共立 WP-SP084DB ダブルバスレフエンクロージャー組立キットです。共立電子のワンダーキット系だと思います。8cmユニット用。 |
吉本 DB-810 吉本のベーシックなバスレフ型エンクロージャーキット。化粧スリットが入っているのはさすが吉本です。8cmユニット用。 |
吉本 BW-800 バックロードホーン型エンクロージャーキットです。イチから作ると大変ですが、これだと手軽に組めます。8cmユニット用。 |
吉本 BW-1000 バックロードホーン型エンクロージャーキットです。BW-800のサイズアップ版です。10cmユニット用。 |
吉本 BW-1000 バックロードホーン型エンクロージャーキットです。置き場所を選ばない、BW-1000のトールボーイ型です。10cmユニット用。 |
吉本 BW-1200 バックロードホーン型エンクロージャーキットです。BW-1000のサイズアップ版で、10,12cmユニット用です。 |
吉本 TN-1 個性のある吉本のバスレフ型エンクロージャーキットです。フロントホーンにもなっています。8cmユニット用。 |
吉本 DB-80SS サイドスリットによるバスレフ型のエンクロージャーキットです。想像するより音質に定評があるようです。8cmユニット用。 |
DCK-F071W-C3 ウッドコーンのDCU-F071W専用キットで、かなりクォリティーが高いです。ユニットを取り付けるセミキットです。 |
FOSTEX P650-E 簡単スピーカー「かんすぴ」シリーズ。組み立て&塗装済みのエンクロージャーにユニットを取り付けるだけのキットです。 |
FOSTEX P800-E 簡単スピーカー「かんすぴ」シリーズ。P650-Eのサイズアップ版で、8cmユニット用。入門用としてもおすすめ。 |
FOSTEX P1000-E 簡単スピーカー「かんすぴ」シリーズ。P800-Eのサイズアップ版で、10cmユニット用。手軽に組めます。 |
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